犬の肘関節の病気とは?病気の種類や症状などについて獣医師が解説

笑っているビーグル犬

「まだ若いのに、前足をかばって歩いている気がする」
「大型犬は肘の病気が多いと聞いたけど、どんな病気があるの?」
このような不安や疑問をお持ちの飼い主様も多いのではないでしょうか。

犬の肘関節の病気は、特に若い大型犬に多く見られます。
「成長期だから仕方ないのかな」「そのうち治るだろう」と思って放置してしまうと、症状が進行して慢性的な痛みが続く原因になる病気が多いです。

今回の記事では、犬の肘関節に多い病気の種類や症状などについて解説します。
大型犬を飼っている飼い主様は、ぜひ参考にしてください。

目次

犬の肘関節疾患の症状と発症しやすい犬種

犬の肘関節疾患では、前足をかばったり、散歩後に足をあげたりするといった症状が見られます。
早期発見・早期治療が予後を大きく左右するため、日常の歩き方の変化に気づくことが大切です。

具体的には次のような様子が見られます。

  • 散歩後や運動後に前足をあげる
  • 前足をかばうようにして歩く
  • 起き上がるときに時間がかかる
  • 前足の肘を触ると嫌がる
  • 運動を嫌がるようになる

これらの症状が見られる場合は、肘関節の異常が疑われます。
「若いのに前足が痛そうだな」と感じたら早めに病院を受診してみましょう。

発症しやすい犬種

犬の肘関節の病気は、大型犬や超大型犬に多くみられます。
特に発症しやすいのは次のような犬種です。

  • ラブラドールレトリーバー
  • ゴールデンレトリーバー
  • ジャーマンシェパード
  • バーニーズマウンテンドッグ
  • ロットワイラー

これらの犬種は遺伝的に肘関節の病気の素因を持つ犬種が多く、生後4〜12ヶ月ごろの成長期に発症する場合があります。
若い時期に前足の異常を感じた場合は、特に注意が必要です。

犬の肘関節に多い病気の種類

犬の肘関節の病気にはいくつか種類があり、まとめて肘関節形成不全と呼ばれ、以下の3つの病気が含まれます。

  • 肘突起癒合不全
  • 内側鈎状突起分離
  • 離断性骨軟骨症

肘関節形成不全では、これら3つの病気が複数同時に発生する場合もあります。

肘突起癒合不全

肘突起癒合不全は肘の後ろ側にある小さな骨が成長の過程で周囲の骨とくっつかずに、分離したままになる病気です。

犬の肘関節は橈骨と尺骨という2本の骨と上腕骨の3本の骨から形成されています。
尺骨の先端には肘突起と呼ばれる小さな骨の出っ張りがあり、子犬のうちは尺骨と分離した状態です。
本来は成長とともに肘突起と尺骨が一体化しますが、遺伝的な要因や橈骨と尺骨の成長スピードの違いなどにより一体化しないことがあります。
肘関節を動かすたびに肘突起が不安定に動くため、炎症や痛みを引き起こします。
放置すると慢性的な足の痛みや歩き方の異常に繋がるため、若いうちから肘関節の異常がないか、気をつけておくことも大切です。

内側鈎状突起分離

内側鈎状突起分離は肘関節の内側にある小さな突起に亀裂が生じたり軟骨の損傷が生じる病気です。
大型犬の肘関節疾患の中で最も多く見られます。
前足をかばうように歩いたり、肘を触ると嫌がったりするような症状が初期のサインとして現れることがあります。

離断性骨軟骨症

離断性骨軟骨症は関節の表面を覆う軟骨の一部が剥がれて関節内に遊離する病気です。
肘だけでなく肩や足首などにも起こりますが、肘では上腕骨の内側に多く見られます。
剥がれた軟骨片が関節の中で動くたびに痛みを引き起こし、放置するほど関節内のダメージが広がります。

これらはいずれも放置すると関節の変形や慢性的な痛みを引き起こすため、変化に気づいたら早めに病院を受診することが大切です。

走っているハウンド犬

犬の肘関節疾患の治療

犬の肘関節疾患の治療は、病気の種類や進行度などに応じて選択されます。
治療方法は保存療法と外科手術の二つに分けられます。

犬の肘関節疾患の保存療法

保存療法は手術を行わずに痛みをコントロールしながら管理する方法です。
治療内容は、

  • 消炎鎮痛剤の投与
  • 体重管理
  • 運動制限
  • サプリメントの活用
  • リハビリテーション

などが中心です。

保存療法は、症状が軽い場合や高齢で手術リスクが高い場合に選択されることがあります。
ただし、保存療法は根本的な治療ではなく、炎症が悪化して予後に影響する場合があることには注意が必要です。
関節の変形など症状の進行を完全に防ぐことは難しく、定期的な経過観察が必要です。

犬の肘関節疾患の外科手術

多くの肘関節疾患では、早期の外科手術が推奨されます。
外科手術は以下のような重要な役割を果たす治療方法です。

  • 痛みの軽減
  • 歩行機能の改善
  • 将来的な関節炎リスクの軽減

手術の方法にはいくつか種類があります。
例えば関節鏡を使った手術は、小型のカメラを関節内に挿入して傷んだ骨片や軟骨を除去する方法です。
体への負担が少ないですが専用の機械が必要なため、行える施設は限られます。
また、矯正骨切り術と呼ばれる方法は、骨を部分的に切除・切断することで、骨の変形を整えたり、関節の噛み合わせを改善する手術です。
この手術は関節にかかる異常な圧力を分散させ、痛みの軽減や機能回復を目的に行われます。
発症年齢が若いほど、良好な回復が期待できるため、症状に気づいたら早めに相談することが大切です。

こちらに走ってくるゴールデンレトリーバー

まとめ

犬の肘関節疾患は、若い大型犬に多く見られる病気です。
前足をかばったり、散歩の後に足をあげたりする症状が見られたら、早めに病院を受診することが大切です。
肘関節疾患は、放置してしまうと関節の変形などを引き起こし、慢性的な痛みが続く原因にもなります。RASKでは整形外科を専門とする獣医師が全国の提携病院で手術に対応しており、犬の肘関節疾患の診療や治療にも対応しています。
「最近うちの子の歩き方に違和感がある」という飼い主様は、ぜひ提携病院までお気軽にご相談ください。

  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

獣医師、合同会社RASK代表、京都動物医療センター整形外科科⻑
資格:テネシー大学公式認定 CCRP
全国の犬猫の出張外科医として活動中