犬の外耳炎が治らない…それ、中耳炎かもしれません|手術が必要になるケースを解説

黒いパグ

「耳掃除や点耳薬を続けても外耳炎がなかなか改善しない」
「耳だれや耳からの悪臭がずっと続いている」
「耳を触ろうとすると嫌がったり怒ったりする」
愛犬にこんな変化はありませんか?

犬の外耳炎はよくみられる病気です。
軽い外耳炎であれば多くの場合、耳掃除や点耳薬で改善するでしょう。

一方で、「治ったと思っても再発する」を繰り返している場合は、中耳炎へ進行している可能性があります。
外耳炎から進行した中耳炎は、薬だけでは改善が難しくなり、手術が必要になることがあります。

今回は犬の中耳炎について、

  • 外耳炎から中耳炎へ進行する仕組み
  • 中耳炎でみられる症状
  • 画像検査や手術の必要性
  • 手術について

についてわかりやすく解説します。

ぜひ最後までお読みいただき、愛犬の耳のケアにお役立てください。

目次

犬の外耳炎とは?

犬が耳を頻繁にかいたり、頭をぶんぶん振ったりしている姿を見たことはありませんか?
そんなときに多い病気が「外耳炎」です。

犬の耳は、

  • 外耳
  • 中耳
  • 内耳

の3つに分かれています。
外耳炎は、耳の入り口から鼓膜までの「外耳」に炎症が起きる病気です。

外耳炎になると、

  • 耳を気にする
  • 耳が赤くなる
  • においが強くなる
  • 茶色い耳垢が増える
  • 耳だれが出る

といった変化がみられます。
外耳炎の段階でしっかり治療できれば改善することも多い一方で、慢性化すると耳の奥にまで炎症が及ぶ場合があります。

外耳炎が中耳炎へ進行することがある

慢性的な外耳炎では、炎症や感染が鼓膜の奥まで広がることがあります。
この状態が「中耳炎」です。

中耳は鼓膜のさらに奥にある空間です。
中耳炎では、鼓膜の奥で炎症や細菌感染が起こっています。

とくに次のような場合、中耳炎へ進行している可能性があります。

  • 何か月も外耳炎を繰り返している
  • 治療中はよくてもすぐに再発する
  • 長い間、点耳薬を使っている

上記のような状況では、中耳炎が隠れている可能性があります。

次に、中耳炎になると実際にどのような症状が出るのかをみていきましょう。

中耳炎になるとどんな症状が出る?

中耳炎になると、通常の外耳炎より症状が強くなる傾向があります。

飼い主様が気づきやすい変化としては、

  • 耳を触ると痛がる
  • 顔まわりを触られるのを嫌がる
  • 強い悪臭がする
  • 膿のような耳だれが出る
  • 頭を傾ける

などがあります。

また、重症例では、ときに神経症状が出ることもあります。
たとえば、

  • 顔が片側だけ動かしづらい
  • まぶたが閉じにくい
  • 目が揺れる(眼振)
  • ふらつく
  • ぐるぐる回る

といった症状です。
中耳は神経に近い場所にあるため、炎症が広がると顔面神経などに影響が及び、このような症状が現れます。

中耳炎では画像検査が役立つことが多い

中耳炎は、鼓膜のさらに奥で起こる病気です。
そのため、耳の入り口を見ただけでは、実際にどこまで炎症が広がっているのか分からないことがあります。

そこで重要になるのが耳のレントゲン検査やCT検査といった画像検査です。
画像検査では、耳の奥の状態を確認できるため、中耳炎の有無や重症度を詳しく調べることができます。

画像検査では特に、

  • 中耳に膿や液体がたまっていないか
  • 耳道が狭くなっていないか
  • 慢性的な炎症で骨や周りの組織に変化が起きていないか

などを詳しく確認できます。

外耳炎の犬では、見た目よりも奥で炎症が進行しているケースも少なくありません。
なかなか治らない外耳炎では、画像検査によって治療方針が大きく変わることもあります。

中耳炎の治療は?

中耳炎の治療は、炎症や感染の程度によって変わります。

比較的軽い段階であれば、

  • 耳洗浄
  • 点耳薬
  • 抗菌薬
  • 抗炎症薬

などを組み合わせて治療がなされます。
しかし、重症化してしまうと薬だけでは十分に治らないこともあります。

薬以外の治療について、ここで詳しく見ていきましょう。

耳の内視鏡を使った治療について

近年では、耳専用の内視鏡を使って治療を行う施設もあります。

内視鏡では耳の奥を拡大して確認できるため、通常では見えにくい場所まで観察できます。
さらに、鼓膜の奥を洗浄したり、たまった耳垢を取り除いたりすることも可能です。

内視鏡治療は、手術と比べて犬の体への負担が比較的少ない点はメリットですが、

  • 専門的な治療のため、実施施設が限られる
  • 麻酔をかけた処置が複数回必要になることがある
  • 重症例では改善しきれないことがある

といった点もあります。

とくに慢性的な外耳炎を伴う中耳炎では、耳道壁の石灰化によって耳道が狭くなることがあります。
そのため通気性が悪化し、耳垢や細菌が蓄積しやすくなる結果、治療への反応が乏しくなるケースも少なくありません。

こうした重度のケースで検討されるのが、全耳道切除術です。

全耳道切除術とは?

全耳道切除術とは、病的に変化した耳道を切除する手術です。
名前から「耳を切除する手術」と思われることがありますが、切除するのは耳の穴から鼓膜までの耳道であり、外から見える耳は残ります。
また、中耳炎がある場合は、鼓室胞という鼓膜の奥の部分を処置する「鼓室胞骨切り術」が同時に行われます。

飼い主様の中には、「耳を全部取ってしまって大丈夫なの?」と不安に感じる方もいらっしゃいます。
実際には、重度の外耳炎と中耳炎の犬では、すでに耳道が正常に機能していないことも少なくありません。
そのようなケースでは、手術によって強い痛みや悪臭から解放され、生活の質が改善することが期待されます。

なお、全耳道切除術は難易度の高い手術のひとつであり、術後に感染症や顔面神経麻痺などを起こす可能性があります。
安全性を高めるためにも、耳の解剖や耳科外科に習熟した獣医師による手術が推奨されます。

まとめ

横を見ている白い犬

犬の外耳炎が長期間続く場合、中耳炎へ進行している可能性があります。
さらに、耳道は少しずつ変形し、元の状態に戻りにくくなっていきます。
そのため、「いつもの外耳炎だから」と繰り返し様子を見ているうちに、気づかないまま病気が進行してしまう犬も少なくありません。

「手術」と聞くと、不安や迷いを感じる飼い主様も多いと思います。
愛犬に手術を受けさせることは、とても勇気のいる決断です。
一方で、外耳炎や中耳炎による痛みやかゆみ、悪臭に長く悩まされている場合、適切な治療によって快適に過ごせるようになる犬も多くいます。RASKでは、耳科外科に知見をもつ獣医師が手術を実施し、できる限り安心して治療に臨んでいただけるよう努めています。
耳の状態でお悩みの飼い主様は、ぜひ一度当サービスをご検討ください。

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この記事を書いた人

獣医師、合同会社RASK代表、京都動物医療センター整形外科科⻑
資格:テネシー大学公式認定 CCRP
全国の犬猫の出張外科医として活動中