「犬が胆嚢粘液嚢腫と診断されて手術を勧められた」
「今は元気なのに、本当に手術をするべきなの?」
「胆嚢を摘出しても普通に生活できるの?」
このようなお悩みをお持ちではないでしょうか。
犬の胆嚢粘液嚢腫は、胆嚢の中に粘液を多く含んだゼリー状の胆汁が蓄積する病気です。
初期にはほとんど症状がないこともありますが、進行すると胆管閉塞や胆嚢破裂を起こし命に関わることがあります。
胆嚢粘液嚢腫の根本的な治療として行われるのが、胆嚢を取り除く「胆嚢摘出術」です。
胆嚢摘出術は症状がない段階で予防的に行われることもありますが、見た目は元気なのに手術をすることに不安を感じる飼い主様も多いと思います。
今回は犬の胆嚢粘液嚢腫の手術の必要になるタイミングや術後に注意すべき点などについて詳しく解説します。
ぜひ最後までお読みいただき、胆嚢粘液嚢腫の手術についての理解を深めていただければ幸いです。
犬の胆嚢粘液嚢腫とは
犬の胆嚢粘液嚢腫は胆嚢の中にある胆汁がゼリー状に固まってしまう病気です。
胆汁は肝臓で作られ肝管を通って胆嚢に貯蔵されます。
健康な犬の胆汁はサラサラしている液体状で、胆嚢の収縮によって十二指腸に分泌されて脂肪の消化を助ける消化酵素です。
胆嚢粘液嚢腫になると、胆嚢の中に粘液を多く含んだゼリー状の胆汁が蓄積し、正常に排出されにくくなります。
犬の胆嚢粘液嚢腫は基本的に無症状で進行しますが、胆嚢の通過障害を起こすと
- 嘔吐
- 食欲不振
- 黄疸
- 下痢
などの症状があらわれることがあります。
超音波検査では、胆嚢の中に放射状の特徴的な模様が確認されることが多いです。
胆嚢粘液嚢腫が進行すると、胆嚢壁への血流が障害されて壊死することがあります。
胆嚢壁が壊死したり胆汁の過剰な蓄積によって胆嚢が破裂したりすると、胆汁がお腹の中へ漏れ出して「胆汁性腹膜炎」を引き起こします。
胆汁性腹膜炎は命に関わる重篤な状態であり、多くの場合で緊急手術が必要です。
犬の胆嚢粘液嚢腫の手術が必要になるタイミング
犬の胆嚢粘液嚢腫の手術は
- 無症状のときに予防的に行う
- 症状が出てから行う
- 胆嚢破裂などが起きた場合に緊急的に行う
など様々な適応タイミングがあります。
胆嚢粘液嚢腫の難しいところは、症状がほとんどない状態から急激に悪化する可能性があることです。
胆嚢が破裂したり胆管が閉塞したりして全身状態が悪化してからでは、麻酔や手術のリスクも高くなります。
犬が高齢でなく基礎疾患もない場合には、胆嚢摘出術のリスクをできるだけ抑えるために、症状がない段階で予防的に胆嚢摘出手術が行われることも多いです。
しかしすべての胆嚢粘液嚢腫で診断後すぐに手術が推奨されるわけではありません。
胆嚢粘液嚢腫と診断されても、犬が高齢で麻酔リスクが高い場合などでは、無症状であれば内科治療を行いながら血液検査や超音波検査で経過を確認していくこともあります。
一方で
- 食欲不振や嘔吐がある
- 黄疸がみられる
- 胆嚢粘液嚢腫が進行している
- 胆管閉塞が疑われる
- 胆嚢破裂が疑われる
などの症状があり、麻酔リスクよりも手術のメリットが上回る可能性が高いと判断される場合には胆嚢摘出術を積極的に検討する必要があります。
犬の胆嚢粘液嚢腫では
- 年齢
- 基礎疾患の有無
- 全身状態
- 血液検査
- 超音波検査
などを総合的に評価し、適切なタイミングで手術が行われます。
犬の胆嚢粘液嚢腫の手術

胆嚢粘液嚢腫の根本的な外科治療が胆嚢摘出術です。
異常を起こしている胆嚢そのものを取り除くことで、胆嚢破裂や胆管閉塞などのリスクを取り除きます。
胆嚢摘出術には、大きく分けて
- 開腹による胆嚢摘出術
- 腹腔鏡による胆嚢摘出術
の2つの方法があります。
それぞれについて解説していきましょう。
開腹による胆嚢摘出術
開腹手術では、お腹を切開して胆嚢や胆管を直接確認しながら手術が行われます。
胆嚢を肝臓から慎重に剥離し、胆管を処理したうえで胆嚢を摘出する必要があります。
開腹手術の大きなメリットは、胆嚢だけでなく腹腔内を広く確認できることです。
- 胆嚢が破裂している場合
- 胆汁性腹膜炎を起こしている場合
- 胆管閉塞が疑われる場合
などでは、開腹手術が適していることがあります。
回復による胆嚢摘出術では必要に応じて胆管や腹腔内の洗浄なども行われます。
腹腔鏡による胆嚢摘出術
腹腔鏡下胆嚢摘出術は、お腹に数か所の小さな穴を開け、そこからカメラや手術器具を挿入して胆嚢を摘出する方法です。
カメラでお腹の中を拡大して細かな血管や組織を観察しながら、胆嚢を肝臓から剥離して摘出することができます。
従来の開腹手術と比較して大きくお腹を切開する必要がないため、傷口を小さくできることが腹腔鏡手術の大きな特徴です。
傷が小さいことで術後の痛みや体への負担を軽減することができます。
胆嚢粘液嚢腫は中高齢の犬で発見されることも多いため、できるだけ体への負担を抑えて治療できる腹腔鏡手術は大きなメリットといえるでしょう。
胆嚢を摘出しても大丈夫?
「胆嚢を全部取ってしまって大丈夫なの?」
と不安に感じる飼い主様もいらっしゃいますよね。
胆嚢を摘出しても、肝臓ではこれまで通り胆汁が作られます。
手術後は胆汁を一時的に蓄えておく胆嚢がなくなりますが、肝臓で作られた胆汁は胆管を通って直接十二指腸へ流れるようになります。
そのため、胆嚢を摘出した犬でも通常の生活を送ることが可能です。
術後の状態が安定すれば、食事や散歩なども徐々に手術前の生活へ戻していきます。
犬の胆嚢粘液嚢腫の手術後に気をつけるべきこと
犬の胆嚢粘液嚢腫で胆嚢摘出術をした後に起こりうる合併症は
- 膵炎
- 腹膜炎
- 播種性血管内凝固(DIC)
- 二次感染
などです。
これらの合併症を防ぐために手術後は入院して
- 点滴
- 鎮痛
- 吐き気の管理
- 必要に応じた抗菌薬の投与
- 栄養管理
などが行われます。
退院後は自宅で
- 食欲がない
- 嘔吐や下痢が続く
- 皮膚や白目が黄色くなる
- 傷口が赤く腫れたり出血や液体が出る
などの症状がないか確認しましょう。
また、胆嚢粘液嚢腫には
- 脂質代謝異常
- 副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)
- 甲状腺機能低下症
などの基礎疾患が関連していることがあります。
犬の胆嚢粘液嚢腫は手術して終わりではなく、必要に応じて基礎疾患についても検査や治療を続けていく必要があります。
「手術後だから多少元気がなくても大丈夫」と自己判断せず、退院時より明らかに体調が悪くなっている場合や、食欲不振や嘔吐が続く場合には早めに動物病院へ相談してください。
まとめ

犬の胆嚢粘液嚢腫の手術は
- 無症状のときに予防的に行う
- 症状が出てから行う
- 胆嚢破裂などが起きた場合に緊急的に行う
など様々な適応タイミングがあります。
手術は犬の年齢や基礎疾患の有無などを総合的に評価して、その犬にとって一番最適なタイミングで行うことが大切です。
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