「犬の乳頭の近くに小さなしこりがある」
「愛犬が動物病院で乳腺腫瘍の診断を受け、手術をすすめられた」
「乳腺腫瘍の手術ってどんな手術なの?」
このようなお悩みをお持ちではないでしょうか。
犬の乳腺腫瘍は未避妊の雌犬に多くみられる腫瘍です。
腫瘍が悪性の場合には大きくなるほど予後が悪くなる傾向があるため、手術が可能な場合には早期の外科的切除が重要です。
この記事では、犬の乳腺腫瘍について手術の必要性や注意点を解説いたします。
ぜひ最後までお読みいただき、乳腺腫瘍の手術についての理解を深めていただければ幸いです。
犬の乳腺腫瘍とは
犬の乳腺腫瘍とは、乳腺を構成する組織から発生する腫瘍です。
犬の乳腺腫瘍の発生には、女性ホルモンが大きく関係していると考えられています。
未避妊の雌犬では4頭に1頭が乳腺腫瘍を発症するといわれていますが、初回発情前に避妊手術を行った犬では乳腺腫瘍を発症する確率は200頭に1頭と非常に低いです。
ただし避妊手術を受けている犬でも乳腺腫瘍が発生することはあるため、定期的なチェックは必要です。
犬の乳腺腫瘍は良性?悪性?
犬の乳腺腫瘍は良性と悪性の割合が約半分ずつといわれています。
悪性の乳腺腫瘍の中でも手術で根治が見込めるものが約25%、転移や再発の可能性が高いものが約25%程度とされています。
つまり犬の乳腺腫瘍は手術で根治可能なものが全体の約75%で、残りの約25%は手術のみでは根治が難しいということです。
手術するタイミングが寿命に関係する?
犬の乳腺腫瘍は、腫瘍が小さいうちに手術を行うほど良好な予後が期待できます。
ある研究では、悪性乳腺腫瘍を手術した犬の約2年後の生存率は、腫瘍の大きさが
- 1cm未満で約100%
- 1〜3cm未満で約75〜80%
- 3cm以上で約60%
でした。
「まだ小さいから様子をみよう」と待つのではなく、乳腺にしこりを見つけた段階で早めに検査を受けることが大切です。
犬の乳腺腫瘍の手術
犬の乳腺腫瘍では、外科手術による腫瘍の切除が治療の中心となります。
ただし「乳腺腫瘍ならすべて同じ範囲を切除する」というわけではありません。
- 腫瘍の大きさや数
- 発生している場所
- 周囲の組織との癒着
- リンパ節の状態
などを確認し、その犬に適した切除範囲が決められます。
手術前には血液検査だけでなく、胸部レントゲン検査などを行い、肺をはじめとした遠隔転移の有無を確認することも重要です。
単一乳腺切除術
単一乳腺切除術は乳腺にできた腫瘍のみを切除する方法です。
この術式は腫瘍が小さく、周囲との境界が明瞭なときに検討されることがあります。
切除する範囲が比較的小さいため体への負担を抑えられるメリットがあります。
領域乳腺切除術
領域乳腺切除術は、腫瘍が発生した乳腺だけでなく関連する複数の乳腺をまとめて切除する方法です。
この術式は複数の乳腺に腫瘍が発生している場合や、腫瘍の位置などから局所的な切除では不十分と判断される場合などに検討されます。
どこまで切除するかは腫瘍の位置や数などによって異なります。
片側乳腺切除術
片側乳腺切除術は、左右どちらか一方の乳腺を全て切除する手術です。
この術式は同じ側の乳腺に複数の腫瘍が発生している場合に選択されることがあります。
切除範囲が広くなるため、単一乳腺切除術と比較すると傷口も大きくなります。
手術後には適切な鎮痛管理を行い、傷口が開いたり感染したりしないよう注意深く経過を確認することが大切です。
両側乳腺切除術
両側乳腺切除術は、両側の乳腺を同時に切除する方法です。
この術式は左右両側の乳腺に多数の腫瘍が発生している場合に選択されることがあります。
両側乳腺切除は皮膚の縫合が極めて難しく、傷口がうまく閉じ切らないことがあるためあまり推奨されていません。
左右両側の乳腺に多数の腫瘍が発生している場合は片側乳腺切除術を別々に行うことが多いです。

犬の乳腺腫瘍の手術では同時に避妊手術もする?
未避妊の犬では、乳腺腫瘍の摘出と同時に避妊手術を行うことが多いです。
避妊手術によって子宮蓄膿症や卵巣疾患など、将来起こりうる生殖器疾患を予防できるメリットがあります。
ただし、避妊手術を同時に行うことで現在ある乳腺腫瘍が治ったり、必ず再発を防げたりするわけではありません。
また犬が高齢であったり、腎臓や心臓に疾患を抱えている場合では麻酔時間が長くなることのデメリットの方が避妊手術をすることのメリットより大きい可能性があります。
そのため乳腺腫瘍の手術で同時に避妊手術を行うかどうかは
- 犬の年齢や全身状態
- 乳腺腫瘍の状態
- 麻酔時間
などを考慮して判断されます。
犬の乳腺腫瘍の手術の注意点
犬の乳腺腫瘍の手術では、手術をしてはいけない場合や手術後に確認しなければならないことなどの注意点があります。
それぞれについて解説いたします。
犬の乳腺腫瘍で手術をしてはいけないとき
犬の乳腺腫瘍では手術が中心ですが、炎症性乳がんでは手術は推奨されません。
炎症性乳がんは、腫瘍細胞が乳腺周囲の皮膚やリンパ管に広く広がり
- 赤み
- 腫れ
- 熱感
を伴って急速に進行する悪性度の高い乳腺腫瘍です。
炎症性乳がんでは腫瘍細胞が皮膚やリンパ管に広く広がっており、手術で取り切ることが難しく、転移している可能性も高いため手術は適応外とされています。
そのため
- 鎮痛
- 抗炎症治療
- 必要に応じた抗がん剤治療
などで生活の質を保つことを優先します。
犬の乳腺腫瘍の手術後に確認しなければならないこと
犬の乳腺腫瘍では、手術で摘出した組織を病理検査に提出する必要があります。
病理検査では
- 腫瘍が良性か悪性か
- 腫瘍を十分に取り切れているか
などがわかります。
悪性腫瘍の場合はリンパ節や肺などに転移する可能性があるため、手術後も定期的な検査が必要です。
切除した組織の端まで腫瘍細胞が確認された場合は、手術した場所に腫瘍が再発するリスクが高くなるため、追加の手術を検討することもあります。
腫瘍を取り切れている場合でも、残っている別の乳腺に新しい乳腺腫瘍ができる可能性があります。
手術後は定期的に身体検査や胸部レントゲン検査などを受けながら、再発や転移を早期に発見できるようにすることが大切です。
普段の生活の中でも、犬のお腹に新しいしこりができていないかを確認するようにしましょう。

まとめ
犬の乳腺腫瘍は小さい段階で発見することで負担の少ない手術を選択できたり、生存率を上げることができます。
「乳頭の近くに小さなしこりを見つけた」という段階でも経過観察せず、一度動物病院を受診しましょう。
RASKでは日本各地の動物病院と提携して外科出張サービスを提供しております。
愛犬の乳腺にしこりを見つけた場合や乳腺腫瘍の手術についてお悩みの場合は、ぜひ提携の動物病院までご相談ください。
