犬の骨盤骨折|事故に遭ったら確認したい症状と治療法

「交通事故に遭ってから後ろ足を引きずっている」
「高いところから落ちてから歩き方がおかしい」
「排便がうまくできなくなった」

このような症状を目の当たりにして、不安を感じた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
愛犬にこのような症状が見られたら、骨盤骨折の可能性があります。
骨盤は内臓を守る重要な骨であり、骨折を放置すると深刻な合併症を引き起こすおそれがあります。

この記事では犬の骨盤骨折について、原因や症状から治療法まで解説します。
ぜひ最後までお読みいただき、愛犬の健康管理にお役立てください。

目次

犬の骨盤骨折とは

犬の骨盤骨折とは、骨盤を構成する骨が外傷などによって折れてしまう状態です。

骨盤は、

  • 腸骨(ちょうこつ)
  • 恥骨(ちこつ)
  • 坐骨(ざこつ)

の3つの骨から形成されており、股関節や脊椎ともつながった複雑な構造をしています。

骨盤には重要な役割がいくつかあります。

  • 直腸
  • 尿道
  • 膀胱
  • 前立腺(オス)
  • 子宮(メス)

などの骨盤腔臓器を保護するほか、後ろ足の力を体幹に伝える役割や、姿勢を安定させる役割も担っています。

骨盤はその特徴的な形状から、他の骨と密接に関係しています。
そのため骨盤骨折では、複数の箇所が同時に折れてしまうことも珍しくありません。
骨折する場所や変位の程度によって治療方針が大きく異なるため、正確な診断が重要とされます。

犬の骨盤骨折の原因と症状

骨盤骨折の原因は、外傷によるものがほとんどです。
交通事故が最も多く、高所からの落下も主な原因として挙げられます。

体が小さい小型犬の場合は、ソファから飛び降りて着地に失敗したケースなど、比較的軽い衝撃でも骨盤骨折を起こすことがあります。

骨盤骨折では以下のような症状が見られます。

  • 後ろ足を引きずるような歩行障害
  • 運動や散歩ができなくなる
  • 排尿または排便の障害
  • 痛みによる食欲低下や元気消失

骨盤骨折は強い外傷で起こるため、骨だけでなく内臓や神経が同時に損傷していることも少なくありません。
状態によっては骨折の治療よりも内科治療が優先されます。

これらの症状は椎間板ヘルニアと似ていることもあるため、正確な診断が必要です。

走っている犬

犬の骨盤骨折の診断

骨盤骨折の診断では、レントゲン検査が基本となります。

骨折している箇所や骨の変位(ズレ)の程度が評価され、治療方針が決定されます。
粉砕骨折の場合は、CT検査によるより詳細な骨折評価が必要となることもあります。

内臓損傷や神経損傷を併発していることもあるため、胸腹部のレントゲン検査、血液検査、超音波検査といった全身精査が行われることも多く、検査項目が多くなる場合があります。

犬の骨盤骨折の治療

骨盤骨折の治療では、骨折している箇所や骨の変位の程度によって、保存療法と手術療法のいずれかが選択されます。

保存療法

保存療法は、手術を行わずに安静管理で回復を目指す方法です。

骨の変位が見られない不全骨折(ヒビ程度)や、恥骨・坐骨のみの骨折の場合は、基本的に手術は不要です。
1〜2ヶ月程度の安静管理で十分な機能回復が期待でき、定期的な通院で経過を観察していくことになります。

手術療法

手術療法は、骨のズレが大きい場合や骨盤が不安定な場合に選択されます。

手術の目的は、

  • 骨盤を元の形に戻す「解剖学的整復」
  • 排便・排尿がスムーズにできるようにする「排泄ルートの確保」
  • 歩行などの「運動機能の回復」

などです。
メスの場合は将来の出産に備えて産道を確保する目的もあります。

骨盤骨折では、骨をつなぐだけでなく、排泄機能や歩行能力など日常生活への影響も考慮した治療が求められます。

手術が適用となる場合

特に以下のような場合には手術が必要となります。

  • 変位のある腸骨骨折
  • 寛骨臼骨折
  • 仙腸関節脱臼
  • 骨盤腔の狭小を伴う場合
  • 複数箇所の骨折で骨盤自体が不安定な場合

骨盤骨折の手術では、ほとんどの場合プレート法による整復が行われます。
プレート法とは、骨折部位の前後を金属製のプレートとスクリューで固定する方法です。

骨盤周囲には重要な神経や血管が多く存在しており、受傷後10日以上経過すると周囲の組織が固まってしまい、手術が困難になる傾向があります。
そのため、早めの治療が重要です。

治療後の経過と注意点

術後は翌日から歩けるようになることが多いですが、一般的に術後約2ヶ月で骨癒合が確認されるまでは安静が必要です。
激しい運動はプレートの破損やスクリューの緩みにつながるため、獣医師の指示に従って過ごしましょう。

骨盤骨折を放置したり治療が遅れたりすると、重度の排便障害や歩行障害といった深刻な合併症につながりかねません。

術後の経過で気になることがあれば、早めにかかりつけの獣医師にご相談ください。

まとめ

犬の骨盤骨折は、交通事故や落下事故などの強い外傷で起こりやすく、早期の診断と治療が重要です。
治療が遅れると手術が難しくなることもあるため、事故後に異変を感じたら早めに動物病院を受診しましょう。

RASKでは、整形外科疾患に精通した獣医師が全国で出張手術を提供しています。
骨盤骨折に対する外科手術にも力を入れており、症例に合った整形外科手術に対応しております。
愛犬の歩き方がおかしい、事故に遭ったかもしれないなど、気になる症状がございましたら、ぜひお気軽にご相談ください。

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この記事を書いた人

獣医師、合同会社RASK代表、京都動物医療センター整形外科科⻑
資格:テネシー大学公式認定 CCRP
全国の犬猫の出張外科医として活動中