犬の開放骨折の治療|犬の開放骨折への対応について獣医師向けに解説

車の窓から顔と右手を出してこちらを見つめるトイプードル

開放骨折は感染や癒合不全などのリスクが高いため、迅速な対応と慎重な治療が求められます。
犬の開放骨折では

  • 全身状態の安定化
  • 早期の創傷管理
  • 抗菌薬投与
  • 十分な骨折部の安定化

が治療の重要なポイントです。

今回は犬の開放骨折について詳しく解説いたします。
ぜひ最後までお読みいただき、犬の開放骨折の知識を深めていただければ幸いです。

目次

犬の開放骨折とは

開放骨折とは骨折で皮膚や軟部組織の連続性が失われ、骨折部が外部環境と交通している状態です。
犬では

  • 高所からの落下
  • 交通事故
  • 犬同士の喧嘩

などが主な原因となります。

骨が大きく露出している場合だけでなく、骨片が一時的に皮膚を突き破り、診察時には皮下へ戻っているケースも開放骨折に含まれます。
特に脛骨遠位部など、軟部組織が少ない部位では開放骨折が発生しやすいです。
開放骨折では環境中の細菌による汚染に加え、外傷による血流障害や軟部組織壊死が感染リスクをさらに高めます。
開放骨折では通常の骨折よりも慎重な感染管理が重要です。

犬の開放骨折の初期対応

交通事故や転落などによる開放骨折では、骨折よりも生命を脅かす外傷が隠れている可能性があります。
開放骨折の犬が来院したらまずは

  • 気道
  • 呼吸
  • 循環

を評価し、必要に応じて酸素投与や静脈輸液などを行います。
全身状態が安定するまでは創部を滅菌ガーゼなどで覆い、骨折部位の更なる感染を防ぐことも大切です。

全身状態が安定した後、十分な鎮静または全身麻酔下で広範囲に剃毛し、創傷と軟部組織の状態を評価します。

犬の開放骨折の創傷管理

開放骨折では、早期の適切な創傷管理が感染予防と骨癒合に直結します。
創傷処置は無菌的に行い、十分な範囲を剃毛して汚染や組織損傷の範囲を確認します。
特に重要なのが洗浄とデブリードマンです。
それぞれについて詳しく解説いたします。

洗浄

洗浄には生理食塩水などの等張液を使用し、流水で行うのが好ましいです。
クロルヘキシジンやポビドンヨードは創周囲皮膚の消毒には使用できますが、損傷組織へ直接使用すると刺激になる可能性があります。
過度に高い圧力で洗浄すると組織をさらに傷害したり、細菌を深部へ押し込んだりする可能性があります。
開放骨折の傷口の洗浄は優しく丁寧に行いましょう。

デブリードマン

感染予防のために特に重要なのが壊死組織のデブリードマンです。
壊死組織は細菌増殖の足場となり、局所の血流や酸素供給を低下させます。
色調や出血の有無などで皮膚や皮下組織の生存性を確認し、壊死した部分は丁寧に取り除くことが大切です。
完全に遊離した骨片も腐骨化する可能性があるため除去を検討します。

犬の開放骨折における抗菌薬

犬の開放骨折では感染予防のために積極的な抗菌薬の使用が推奨されています。
受傷後なるべく早期に広域の抗菌薬を投与するべきです。
特に受傷後3時間以内の抗菌薬の投与は感染リスクを優位に下げる効果があるといわれています。

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犬の開放骨折の分類

犬の開放骨折の重症度評価には、Gustilo–Anderson分類が広く使用されています。
この分類に応じて治療の適応も変わります。
Gustlio-Anderson分類について詳しく解説していきましょう。

Type I

Type Ⅰの創傷は1cm未満で、鋭い骨片が内側から皮膚を突き破ったような骨折です。
軟部組織損傷は比較的軽度です。

Type II

Type Ⅱは創傷が1cmを超え、中等度の軟部組織損傷を伴います。
皮弁形成や剥離がみられることがあり、Type Iより汚染の程度が高いです。

Type III

Type Ⅲは広い範囲の軟部組織損傷や骨露出を伴う重度の開放骨折です。
Type Ⅲはさらに3つに細かく分類されています。

  • Type III A:軟部組織損傷は重度なものの、骨を被覆できる軟部組織が残っている
  • Type III B:広範な軟部組織欠損と骨損傷があり、強い汚染を伴う
  • Type III C:修復が必要な動脈損傷を伴う

犬の開放骨折の外科治療

犬の開放骨折の外科治療は、犬の全身状態が安定した段階で行います。
Gustilo–Anderson分類のType Ⅲの開放骨折では感染リスクや局所血流の虚血リスクが高いため、創外固定が選択されることが多いです。
創外固定は骨折部を大きく展開せずに固定できるため感染リスクを下げることができます。
また、軟部組織や局所血流を温存しやすいことや、傷口の管理が容易になることも創外固定のメリットです。
ただし創外固定は犬の生活の質を下げる可能性があるため丁寧なインフォームが必要です。

Gustilo–Anderson分類のType ⅠやType Ⅱで創傷管理が適切に行われていて感染がコントロールできている場合にはプレートなどによる内固定が適応になります。

犬の開放骨折の合併症と予後

犬の開放骨折の合併症には

  • 創部感染
  • 骨髄炎
  • 癒合遅延
  • 癒合不全
  • プレートの感染

などがあります。
特に軟部組織損傷や汚染が重度な症例では注意が必要です。
重篤な感染や骨髄炎を生じた場合には、断脚が必要になる可能性もあります。

Gustilo–Anderson分類のType Ⅰの開放骨折では、受傷早期から適切な初期管理を行った場合の予後は概ね良好とされています。
Type ⅡやType Ⅲの開放骨折の場合は、さらに慎重な感染管理が重要です。

海で戯れあって遊ぶ2頭の大型犬

まとめ

犬の開放骨折は通常の骨折と比較して合併症や感染のリスクが高く、治療の難易度が高いです。
適切な洗浄や抗菌薬の投与などをはじめ、正確な診断と治療が求められます。

RASKでは日本全国の動物病院で整形外科の出張外科サービスを提供しております。
犬の開放骨折などの整形外科の治療にお困りの際はお気軽にお問い合わせください。

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この記事を書いた人

獣医師、合同会社RASK代表、京都動物医療センター整形外科科⻑
資格:テネシー大学公式認定 CCRP
全国の犬猫の出張外科医として活動中