「最近、猫の元気がなくてご飯を食べない」
「トイレに行くけど尿がほとんど出ていない」
そんな異変を感じたことはありませんか?
猫は泌尿器系の病気が多いです。
中でも尿の通り道が塞がってしまう「尿管閉塞」は、命に関わることもある危険な病気です。
猫の尿管閉塞の治療の一つに「尿管膀胱新吻合」という外科手術があります。
今回はこの手術について、原因から治療、手術後のケアまでをわかりやすく解説します。
ぜひ最後までお読みいただき、愛猫の排尿に異変を感じたときに役立てていただければ幸いです。
猫の尿管膀胱新吻合について
猫の尿管膀胱新吻合とは、腎臓から膀胱へ尿を流す「尿管」という管が詰まってしまったときに行われる手術です。
この手術により尿管の詰まった部分を取り除き、健康な部分の尿管と膀胱を直接つなぎ直すことで尿管の流れを取り戻すことができます。
尿は腎臓で作られて尿管を通り、膀胱に溜まってから排出される仕組みです。
尿管が結石などで塞がってしまうと、尿管閉塞を引き起こし尿を排泄できなくなります。
尿の役割は体内の老廃物や余分な水分を排泄することです。
尿管閉塞により猫が尿を排泄できなくなると、体に老廃物が蓄積し全身状態が急激に悪化します。
猫の尿管閉塞は内科治療で改善しない場合に外科治療が行われます。
尿管膀胱新吻合は猫の尿管結石に対する外科治療の一つです。
猫の尿管閉塞が起こる原因
猫の尿管は非常に細く、内径は0.4mm程度しかありません。
そのため、人や犬と比較して猫は尿管閉塞を起こしやすいです。
猫の尿管閉塞の原因には以下のものがあります。
それぞれ解説していきます。
尿管結石
猫の尿管閉塞の主な原因です。
特にシュウ酸カルシウム結石という種類の結石が多いです。
この結石は食事や猫の体質などによって猫の尿管にできてしまいます。
猫の尿管結石は食事療法により予防することが可能です。
狭窄
尿管炎などの炎症により猫の尿管が狭くなることで閉塞してしまいます。
腫瘍
尿管やその周囲に腫瘍ができることで、物理的な圧迫により尿管を閉塞することがあります。

猫の尿管閉塞のサイン
猫の尿管閉塞は緊急疾患のため、早期の治療が必要です。
尿管閉塞を起こした猫には、以下のような症状が見られます。
- 元気・食欲が落ちる
- 嘔吐する
- 尿がほとんど出ていない
- お腹を触ると痛がる
外見上は「少し元気がない」程度に見えることもあるため、猫の体調に違和感を感じたら早めに動物病院を受診することが大切です。
猫の尿管膀胱新吻合の手術
猫の尿管膀胱新吻合は詰まった尿管の病変部を切除し、残った健康な尿管の端を膀胱に直接つなぐ手術です。
手術は全身麻酔下で行われ、以下のような手順で進みます。
- お腹を開け、腎臓・尿管・膀胱を確認する
- 尿管の詰まった部分を特定し、該当部分を切除する
- 残った尿管の端を膀胱の側面に新たに小さな穴を開けて縫い付ける
- 尿の通りを確認し、お腹を閉じる
尿管閉塞の原因や閉塞部位から事前の手術計画が重要です。
猫の尿管は非常に細く、縫合には高い技術が必要なため、熟練した外科医による手術が推奨されます。
手術後の経過と注意点
手術後の猫は数日から1週間ほど入院し、点滴や抗生物質、鎮痛管理を行いながら腎機能の回復を確認します。
退院後も血液検査やエコー検査で尿の流れと腎臓の働きをチェックするため、定期的な通院が必要です。
手術後の猫に注意すべき点は以下の通りです。
- 排尿量の変化(少ない・多い)
- 元気や食欲の低下
- 発熱や嘔吐
猫にこれらの症状が見られる場合は、尿管の再狭窄や感染の可能性があるため早急に動物病院を受診しましょう。
手術部位が安定するまで、安静に過ごすことと十分な水分摂取を心がけることが大切です。

再発防止と日常のケア
結石による猫の尿管閉塞は結石が再びできることで再発することがあります。
猫の尿管閉塞の再発を防ぐためには、日常生活での管理が重要です。
主なポイントは以下の通りです。
- 獣医師の指導のもとで尿路結石用の療法食を与える
- 新鮮な水をいつでも飲める環境を整える
- 水飲み場を複数設置したり、循環式給水器を使う
- ストレスを減らし、生活リズムを安定させる
猫の尿を定期的に検査し、尿の異常を早期に見つけることも大切になります。
「なんとなく元気がない」「トイレの回数が減った」など、わずかな変化も見逃さないようにしましょう。

まとめ
猫の尿管閉塞はさまざまな原因で起こる病気です。
閉塞の原因や部位によって外科手術が必要になることがあります。
猫の尿管膀胱新吻合は、尿管閉塞を起こしてしまった際に尿の流れを取り戻すための外科手術です。
猫の尿管は非常に細く、尿管膀胱新吻合には高度な技術と手術後の管理が重要になります。
RASKでは、泌尿器疾患に精通した獣医師が全国の提携病院で高度な外科手術を行っています。
「尿管閉塞と診断された」「手術を勧められたけど不安」という飼い主様は、ぜひ一度ご相談ください。
