犬の会陰ヘルニアは手術が必要？｜原因・症状・手術方法について解説

「最近、お尻の横が腫れているけど大丈夫？」
「排便に時間がかかっている気がするけど病気？」
「病院で会陰ヘルニアと言われたけど、手術が必要なの？」
そんな不安を抱えている飼い主様もいらっしゃるかもしれません。
会陰（えいん）ヘルニアは、肛門の周囲にある筋肉がゆるみ、腸や膀胱などの臓器が皮膚の下に飛び出してしまう病気です。
とくに高齢の未去勢のオス犬でよくみられます。自然に治ることはなく、基本的には外科手術が必要です。
進行すると排便や排尿が困難になるケースもあり、場合によっては命に関わる状態に陥る危険な病気です。

今回は、犬の会陰ヘルニアの原因や症状、そして手術の内容や注意点について、わかりやすく解説します。
ぜひ最後までお読みいただき、会陰ヘルニアへの理解と適切な対応の参考にしてください。

会陰ヘルニアとは？

会陰ヘルニアとは、骨盤まわりの筋肉がゆるんで、肛門の横にすき間ができてしまう病気です。
そのすき間から腸や脂肪組織、時には膀胱までが皮膚の下に押し出されてしまいます。
多くの場合、左右どちらかの肛門横に柔らかいふくらみがみられやすいです。
ただし、必ず片側だけというわけではなく、進行すると反対側にも同様の変化が起こることがあります。

原因と発症しやすい犬種

会陰ヘルニアは、男性ホルモン（テストステロン）による筋肉への影響が主な原因と考えられています。
とくに以下のような特徴を持つ犬で多くみられます。

未去勢の中高齢のオス犬
小型〜中型犬（特にパグ、ボストンテリア、ペキニーズ、シーズーなど）
長期間の便秘やいきみ癖がある犬

また、先天的に骨盤周囲の筋肉が弱い体質の犬も、発症リスクが高いとされています。
発症リスクを下げるためにもなるべく去勢をしておくことがおすすめですね。

飼い主様が気づきやすい会陰ヘルニアの症状

会陰ヘルニアでは、以下のような症状が見られます。

肛門の横がふくらんでいる
排便に時間がかかる、いきむ
便が細くなる・変形している
排尿姿勢をとるのに時間がかかる
元気や食欲が落ちてくる

とくに会陰ヘルニアが進行した場合、膀胱がヘルニア孔に入り込んでしまい、尿が出なくなる（尿閉）こともあります。
この場合は緊急手術が必要になることもあるため注意が必要です。

会陰ヘルニアは手術が必要な病気

会陰ヘルニアは簡単に治る病気なのでしょうか？
残念ながら、会陰ヘルニアは投薬や生活管理では治せません。
根本的な治療には、外科手術が必要です。

手術では、ゆるんだ筋肉のすき間を閉じるように再建し、再び腸や膀胱が出てこないようにします。
多くのケースでは、犬自身の筋肉や腱（閉鎖筋、外肛門括約筋など）を利用して補強します。
筋肉が十分に使えない場合には、人工メッシュで補強することも。

さらに、再発や膀胱脱出のリスクが高い場合には、「結腸固定術」や「精管固定術」などの補助的手術を併用することもあります。
結腸固定術は、腸がヘルニア孔へ再び入り込むのを防ぐため、腸を腹壁に縫いとめる方法です。
精管固定術は、オス犬の精管を利用してヘルニア孔を補強する方法で、筋肉の補強が難しい場合に有効です。
どのような手術を行うかはよく獣医師と相談して決めるようにしましょう。

また、再発予防のために未去勢の場合は去勢手術を同時に行うのが一般的です。
去勢手術を行い男性ホルモンの影響を減らすことで、反対側への再発や再び筋肉が弱くなるリスクを下げることができます。