犬の成長板骨折の手術|犬の成長板骨折と手術について部位別に獣医師が解説!
犬の成長板骨折は成長期の子犬に特徴的な骨折です。
早期に正しく治療しないと骨の変形や成長障害につながることがあります。
成長期の犬は活発に動き回るため、転倒や落下の衝撃で骨折することが少なくありません。
「犬を抱っこしていたら飛び降りてしまって、足がつかなくなった」
そんな経験がある飼い主様もいらっしゃるのではないでしょうか。
今回は犬の成長板骨折について、骨の部位別の特徴や手術について詳しく解説します。
愛犬がもし骨折してしまったときに慌てないためにも、ぜひ最後までご覧ください。
犬の成長板骨折とは?
犬の成長板骨折とは、骨の端にある成長板という部分が折れてしまう病気です。
成長板は骨が長く伸びるために必要な組織で、子犬の成長期にしか存在しません。
成長板が損傷すると骨の成長が止まったり、骨が曲がってしまう可能性があります。
場合によってはジャンプや低い段差を降りるだけで骨折することもあり、特に子犬のうちは注意が必要です。
また成長板骨折には大きく分けて5つのタイプがありますが、詳細は割愛します。
5つのタイプについては画像を参考にしてみてください。

骨の部位別の成長板骨折の特徴
犬の成長板骨折は骨の部位によって症状や注意点が異なります。
代表的な部位として以下の4つが挙げられます。
- 上腕骨
- 橈骨・尺骨
- 脛骨
- 大腿骨
それぞれの違いが分かるように詳しく解説しますね。
上腕骨の成長板骨折
上腕骨の成長板骨折は、肘関節に近い部分で起こりやすいです。
関節に近いため骨折がずれたまま治ると、肘の曲げ伸ばしに障害が残ります。
また成長板の障害によって前足の長さが健康な側よりも短くなることもあります。
橈骨・尺骨の成長板骨折
橈骨と尺骨は前足を構成する骨で、足先側の成長板が骨折することがほとんどです。
とくに小型犬は橈骨と尺骨がとても細いため、成長板骨折を起こしやすいです。
橈骨か尺骨の片方に成長板骨折が起こると、健康な方の骨が曲がって成長してしまいます。
骨の成長障害が起きている場合、成長障害のある骨を意図的に切ることも治療の一つです。
骨を切ることで健康な側の骨をまっすぐに伸ばすことができます。
一度曲がってしまった骨は戻らないため、早めに手術をすることが大切です。
術後は骨の成長を定期的に観察し、再び変形が進まないか確認することが欠かせません。
脛骨の成長板骨折
脛骨は膝の曲げ伸ばしの支柱となる骨で、膝側の成長板骨折が多く見られます。
とくに膝蓋靱帯が付着する脛骨稜の成長板骨折は膝の曲げ伸ばしへの影響が大きいです。
脛骨稜の整復が不十分だと、膝の曲がる向きが変化してX脚やO脚のようになります。
さらに整復が正確でない場合、長期的には前十字靭帯断裂が起きることが多いです。
このため整形外科に精通した獣医師に手術を依頼することが大切だといえます。
大腿骨の成長板骨折
大腿骨の成長板骨折は関節内に及ぶ複雑な骨折となることが多く、整復が難しい骨折です。
とくに大腿骨の足先側の成長板は複雑な形をしており、手術には高度な技術が必要です。
大腿骨の成長は足の長さに大きく関わるため、熟練した獣医師に手術をしてもらうことが望ましいですね。
股関節を形成する大腿骨頭の成長板骨折もまた整復が難しいとされています。
実際に整復が困難な場合は、大腿骨頭切除術を行うことも多いです。
大腿骨頭切除術を行うと骨盤と大腿骨のつながりはなくなりますが、偽関節と呼ばれる構造が出来て正常に足が動くようになります。
犬の成長板骨折の治療
犬の成長板骨折の治療は基本的に手術が必要ですが、条件が合えば保存療法も行われます。
保存療法の条件は骨がほぼずれておらず、発症後すぐに診断されていることです。
また保存療法では骨を外固定をした状態で、約3週間安静にしておくことが必要です。
現実的には3週間も安静にできない犬が多く、部位によっては外固定が不可能なこともあります。
そのため実際には保存療法が選ばれることは少なく、ほとんどが手術の対象になりますね。
犬の成長板骨折の手術は、骨の部位や骨折のタイプによって方法が変わります。
代表的な手術方法は以下の3つです。
- パラレルピン法
- クロスピン法
- プレート固定法
それぞれについて見ていきましょう。
パラレルピン法
パラレルピン法は2本または3本のピンを平行に挿入して骨を固定する方法です。
ピンを平行に固定することで、骨の成長方向を妨げにくくなることが利点です。
この手術法は、とくに大腿骨頭の成長板骨折で選ばれます。
一見シンプルな技術ですが、正確な角度で平行に入れるには高い技術が必要です。
クロスピン法
クロスピン法は2本のピンを交差させて骨を固定する方法です。
角度の違う2本のピンによって骨の安定性が高まり、回転やずれに強い整復が可能です。
とくに脛骨の足首側や大腿骨の膝関節側の成長板骨折でよく使われます。
ただしクロスピン法は骨の成長を阻害するリスクが高いため、3〜4週間以内にピンを抜去する必要があります。
プレート固定法
プレート固定法は金属プレートとスクリューで骨をしっかり固定する方法です。
より複雑な成長板骨折において補助的に用いられることが多いです。
骨の成長を阻害するリスクが高いため、3〜4週間程度と早期に抜去します。
複雑な成長板骨折が起こりやすい上腕骨の肘側や橈骨や尺骨の足先側の成長板骨折で多く用いられます。
まとめ
犬の成長板骨折は成長期に多い骨折で、放置すると骨の変形や歩行障害につながります。
骨の部位ごとに症状や注意点が異なり、手術法もそれぞれの特徴に合わせて選択されます。
一見シンプルに見える手術ですが、正確に整復するためには高度な技術が必要です。
そのため、信頼できる腕のいい獣医師に任せることが大切です。
RASKでは外科の専門獣医師が全国の提携動物病院で高度な手術を提供しています。
成長板骨折の手術を検討している飼い主様は、ぜひご相談ください。
