犬の上腕骨骨折とは|獣医師が知っておくべき上腕骨骨折の治療ポイントを解説
犬の上腕骨骨折は動物病院において遭遇頻度の高い症例の一つです。
上腕骨骨折は適切な診断と治療法の選択が予後を大きく左右しますが、整復の難易度などから現場の獣医師が対応に苦慮するケースも少なくありません。
この記事では犬の上腕骨骨折について詳しく解説いたします。
整形外科診療に取り組む獣医師の皆様はぜひ最後までお読みいただき、参考にしてみてください。
犬の上腕骨骨折とは
犬の上腕骨骨折は犬の前足の肩関節と肘関節をつなぐ上腕骨が折れる状態を指します。
上腕骨は比較的太い骨であり、前足を支えるために重要です。
犬は上腕骨を骨折すると、前足を使えなくなり、歩行困難や激しい痛みを伴います。
犬の上腕骨骨折は骨の中央部から肘関節に近い部位でよく発生します。
上腕骨骨折の原因
犬の上腕骨骨折の多くは外部から強い力がかかることで起こります。
上腕骨骨折の原因は交通事故や高所からの落下が多いですね。
上腕骨骨折は
- 成長期の若齢犬
- 高齢犬
- 活動量の多い犬
に多くみられます。
成長期の若齢犬は骨が成長中で成犬に比べ、骨の強度が弱いため、骨折しやすいです。
また、高齢犬では骨密度の低下と筋肉の衰えにより骨折することがあります。
上腕骨骨折は関節内骨折が多い?
犬の上腕骨骨折は関節内骨折が多く見られます。
上腕骨の肘に近い部分での骨折は関節内に骨折線が入ることが多く、関節内骨折と呼びます。
関節内骨折は治療が難しく、適切な整復と固定が行われない場合、後遺症が残るリスクが高くなるので注意しましょう。
また、犬の上腕骨骨折には以下のような特徴的な骨折が存在します。
- 成長板骨折
- 上腕骨顆上骨折
- 上腕骨遠位Y字骨折
ここでは、それぞれの骨折について詳しくみていきましょう。
成長板骨折
成長板骨折は成長期の犬に特有の骨折で、骨の両端にある成長板が骨折する状態です。
成長板は骨の成長に関与しているため、成長板骨折は正常な骨の成長を阻害し、骨の変形や左右の骨の長さの違いを引き起こす可能性があります。
特に上腕骨遠位側の成長板骨折が発生しやすく、関節内骨折のことが多いため、適切な診断と早期治療が非常に重要です。
上腕骨顆上骨折
上腕骨の遠位には顆部と呼ばれる部分があり、肘関節を構成しています。
上腕骨顆上骨折は肘関節の直上で発生する骨折で、1歳未満の若齢犬に起こりやすいです。
肘関節の脱臼を伴うこともあるので、注意が必要です。
上腕骨遠位Y字骨折
上腕骨遠位Y字骨折は肘関節周囲の骨が複数箇所折れてしまう複雑な骨折です。
関節面での骨折であるため、きちんと整復しないと歩けるようになりません。
上腕骨遠位Y字骨折の手術は骨折の手術の中でも難易度が高いです。
上腕骨骨折の治療のポイント
犬の上腕骨骨折の多くは以下のような理由で手術が必要です。
- 体の中心に近い骨であるため、ギプス固定では両端の関節を不動化することができない
- 周りの筋肉が多く、効果的な包帯を適用することが困難
- 筋肉による強い牽引力により骨片のズレが起こりやすい
上腕骨骨折の治療は骨折のタイプによってさまざまです。
治療がうまくいかないと重篤な後遺症が残ってしまうため、骨折のタイプをしっかり見極め、適切な治療を行いましょう。
特に関節内骨折では解剖学的な整復の難易度が上がります。
整復がうまくいかないと、骨変形や将来的な関節炎のリスクが高まるので注意が必要です。
また、上腕骨の外側を通る神経を損傷した場合はナックリングが残ってしまうこともあります。
このような理由から上腕骨骨折の治療は高度な外科技術と豊富な経験が必要です。
まとめ
今回は犬の上腕骨骨折について解説しました。
上腕骨骨折は特殊な形態の骨折も多く、治療が難しいことが多いです。
特に関節内骨折や成長期の骨折では、将来的な機能障害を防ぐために迅速かつ精密な治療が求められます。
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