犬の骨肉腫の手術|犬の骨肉腫は断脚が必要?獣医師が解説

草原の木陰で気持ちよさそうに伏せているゴールデンレトリーバーの写真

犬の骨肉腫の手術|犬の骨肉腫は断脚が必要?獣医師が解説

犬の骨肉腫は骨に発生する悪性腫瘍の中でもっとも多い腫瘍です。
特に大型犬での発生が多く、非常に進行が速いことが知られています。
骨肉腫は進行が早く、より良い予後のためには早期の診断と治療が重要です。
今回は犬の骨肉腫の手術である断脚術を中心に詳しく解説します。
ぜひ最後までお読みいただき、愛犬が骨肉腫と診断された際の参考にしてください。

目次

犬の骨肉腫について

犬の骨肉腫は骨に発生する悪性腫瘍であり、非常に予後が悪いことで知られています。
犬の骨肉腫の約75%は四肢に発生し、特に前肢での発生は後肢の2倍です。
症状として強い痛みを伴い、はじめは患肢を引きずって歩く程度ですが、進行すると全く足をつけなくなります。
ただの捻挫と思って様子を見ていたら実は骨肉腫だった、ということは珍しくありません。

また骨肉腫は骨を破壊して増殖するため骨の変形や腫脹が認められ、末期には骨折を起こすこともあります。
転移が非常に早い腫瘍でもあり、発見時にはすでに肺転移があるケースも少なくありません。
大変予後が悪く、無治療であれば数ヶ月で亡くなってしまうことがほとんどです。

犬の骨肉腫の診断

犬の骨肉腫の診断はレントゲン検査と病理検査によって行われます。
犬に足の痛みがあって痛み止めが効かない場合は、骨肉腫を疑ってレントゲン撮影をします。
骨肉腫の場合は、骨が溶けたことを示す骨融解像がレントゲン上で認められます。
レントゲン検査で骨肉腫が強く疑われる場合は、次に細胞診または生検による病理検査が行われます。
この検査は痛みを伴うため、麻酔をかけて行われます。

そして各種検査の結果、骨肉腫が疑われた場合は肺転移の有無を評価するために胸部レントゲンやCT検査も行われます。
転移の有無を把握しておくことは、治療方針の決定において非常に重要です。

犬の骨肉腫の治療

犬の骨肉腫の治療の基本は、腫瘍の発生した肢を断脚術によって取り除くことです。
ただ断脚術も含め、骨肉腫はどんな治療でも長期間生存させることができない病気です。
このため治療方針は獣医師とよく相談して決めることが大切ですね。
そのうえで、以下に3つの治療方針を挙げて解説していきます。

  • 断脚術のみ
  • 断脚術と抗がん剤
  • 保存療法
白い大きなドアの前で伏せて右腕を挙げている雑種犬の写真

断脚術

断脚術は犬の骨肉腫の治療の基本で、骨肉腫のある肢を完全に切除する手術のことです。
この手術では前肢では肩甲骨から先を、後肢では股関節から先をすべて取り除きます。
ただ骨肉腫は肺転移するのが早く、断脚術のみだと生存期間は18~19週とされています。
短い生存期間であっても、犬の骨肉腫に対して断脚術を行う理由として以下の3つが挙げられます。

  • 再発の予防
  • 痛みの除去
  • 褥瘡の予防

ひとつずつ見ていきましょう。

再発の予防

再発の予防は、犬の骨肉腫に対して断脚術を行う最大の理由です。
骨肉腫は進行するのが速く、部分切除では再発してしまうためです。
次に説明する抗がん剤治療を行う上では、がん病変を完全に取り除くことが必要となります。

痛みの除去

痛みの除去は犬の骨肉腫に対して断脚術を行う理由のひとつです。
犬の骨肉腫は痛みが非常に強く、生活の質がとても悪くなります。
このため犬が少しでも穏やかに過ごせることを目的に、断脚術によって痛みを取り除くことは重要です。

褥瘡の予防

褥瘡の予防は犬骨肉腫に断脚を行う理由のひとつです。
骨肉腫の発生部によっては、飼い主様としては肢を完全に切除するのはためらわれるかもしれません。
ただ肢を関節のところで中途半端に残しても、床にこすれて褥瘡になってしまいます。
このため術後の傷のトラブルを回避するためには、完全に断脚することが望ましいです。

断脚術と抗がん剤

断脚術と抗がん剤をあわせて行うことは、もっとも積極的な犬の骨肉腫に対する治療です。
断脚単独の治療では、生存期間はおよそ18~19週間と報告されています。
一方で手術後に抗がん剤治療を行った場合は、生存期間が7~12ヶ月に延長すると報告されています。
大切な愛犬と1年間過ごすことができる可能性を考えると、断脚術と抗がん剤の併用を選択する価値はあるでしょう。

具体的にはカルボプラチンという抗がん剤が第一選択とされています。
カルボプラチンは静脈注射で投与する薬であり、3週間に1度の投与を6回繰り返す投与方法が一般的です。
抗がん剤と聞くと抵抗があるかもしれませんが、最近は副作用を抑えるための併用薬や投与方法もわかってきています。
抗がん剤治療を実施するうえでは、信頼できる獣医師とよく相談しながら進めていくことが大切です。

保存療法

保存療法は犬の骨肉腫に対する緩和的な治療です。
断脚術や抗がん剤といった治療を実施できない場合は、痛み止めを使って強い痛みを抑えることが大切です。
痛み止めとしてよく利用されるものは以下のものがあります。

  • 非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs)
  • オピオイド鎮痛薬
  • 医療用麻薬

とくに痛みが強い場合は医療用麻薬を使用することもあります。
扱っている鎮痛剤の種類は病院によって異なるため、かかりつけの動物病院でよく相談することが大切です。

また犬の骨肉腫は転移が早く、肺転移を起こして犬が呼吸困難になることも多いです。
その際は根本的な治療ができないため、酸素室をレンタルするなどして呼吸が少しでも楽になるようにしてあげることが大切です。

まとめ

犬の骨肉腫は四肢に多く発生し、特に前肢に発生しやすいです。
断脚術と抗がん剤治療を併用することで、7から12か月まで生存期間を延長できます。
犬の骨肉腫は非常に進行が速いため、早期発見と早期の治療が非常に重要です。

RASKでは犬の骨肉腫に対する断脚術を含む外科治療に対応しています。
高度な技術をもつ外科医が、全国の動物病院まで出張して手術を行っております。
犬の骨肉腫で手術が必要な場合は、ぜひ提携している動物病院までご相談ください。

芝生の上をこちらに向かって走って来る若いゴールデンレトリーバーの写真
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この記事を書いた人

獣医師、合同会社RASK代表、京都動物医療センター整形外科科⻑
資格:テネシー大学公式認定 CCRP
全国の犬猫の出張外科医として活動中