犬はまれに腹腔内に精巣が残っている場合があり、腹腔内潜在精巣の摘出術は通常の去勢手術よりも難易度が高くなります。
「腹腔内の精巣がなかなか見つからずに苦労したことがある」
このような先生もいらっしゃるのではないでしょうか。
最近では腹腔鏡を使った手術が腹腔内潜在精巣摘出術にも応用されており、より確実な摘出が可能になっています。
今回は腹腔鏡下での腹腔内潜在精巣摘出術のメリットや導入方法について詳しく解説します。
ぜひ最後までお読みいただき、腹腔鏡手術を検討する際の参考にしてみてください。
犬の腹腔内潜在精巣摘出術について
犬の腹腔内潜在精巣摘出術は腹腔内に残った精巣を摘出する手術です。
犬の腹腔内潜在精巣は精巣腫瘍や精巣捻転のリスクが正常な精巣と比べて高いため、若いうちに摘出しておくことが望ましいです。
ただ犬の腹腔内潜在精巣摘出術は開腹手術によって行うため、犬の痛みなどの負担は小さくありません。
また潜在精巣の位置が分かりにくい場合は、探すのに苦労して手術時間が長くかかることもあります。
一方で近年は腹腔鏡を使った手術が普及し始めており、より犬への負担の少ない腹腔鏡下潜在精巣摘出術も選択できるようになっています。
犬の腹腔鏡下潜在精巣摘出術のメリット
犬の腹腔鏡下潜在精巣摘出術の最大のメリットは、犬への負担が少ないことです。
この手術が犬への負担が少ない理由として以下の3点が挙げられます。
- 傷が小さい
- 潜在精巣を見つけやすい
- 手術時間が短い
ひとつずつ見ていきましょう。
傷が小さい
傷が小さいため腹腔鏡手術は犬への負担が少ないです。
腹腔鏡手術では専用の器具とカメラを入れる数mmの切開を2か所ほど入れるだけです。
一方で開腹での潜在精巣摘出術ではペニスの脇を切皮するため、術後の痛みは小さくありません。
このため腹腔鏡手術は開腹手術と比べて痛みの少ない手術といえます。
潜在精巣を見つけやすい
潜在精巣を見つけやすいため腹腔鏡手術は犬への負担が少ないです。
腹腔鏡手術ではカメラで直接お腹の中を見ながら潜在精巣を探すため、短い時間で潜在精巣を見つけることができます。
このため、手術時間も短くなり犬への負担が少なくなります。
手術時間が短い
手術時間が短いため腹腔鏡手術は犬への負担が少ないです。
腹腔鏡手術では潜在精巣が見つけやすいため、潜在精巣を探す時間が開腹手術と比べて短縮されます。
また、皮膚切開が小さいため縫合にかかる時間も短いです。
このため手術時間が短くなり、吸入する麻酔の量も減ることから犬への負担は小さいです。
犬の腹腔鏡下潜在精巣摘出術導入の課題
腹腔鏡下潜在精巣摘出術を導入するには、いくつかの課題があります。
まず、腹腔鏡手術専用の機器や設備が必要です。
腹腔鏡本体やモニター、特殊な鉗子などを揃えるには多額の初期投資がかかります。
このため初期投資に見合ったリターンを得られるか慎重に判断しなければなりません。
次に、腹腔鏡手術を安全に行うためには技術の習得が欠かせません。
腹腔鏡手術は従来の開腹手術とは操作方法が異なり、トレーニングが必要です。
腹腔鏡手術の習得には時間と費用がかかるため、日常の診療と並行して腹腔鏡手術のトレーニングを行うのは簡単なことではありません。
また腹腔鏡手術はチームワークが求められるため、獣医師だけでなくスタッフの継続的なトレーニングも求められます。
このように設備や人材の面でハードルを感じる動物病院は少なくありません。
しかし腹腔鏡手術のメリットを考えると、今後導入を検討する価値は高いと考えられます。
犬の腹腔鏡下潜在精巣摘出術を出張外科サービスに依頼するメリット
腹腔鏡下潜在精巣摘出術を外科出張サービスに依頼することは多くのメリットがあります。
外科出張サービスでは専門の外科医が病院に出張して手術を担当します。
このため腹腔鏡手術のトレーニングのコストをかけずに、患者様に腹腔鏡手術を提供することができます。
また技術的に信頼のおける外科医に依頼できるため、患者様にも自信をもって腹腔鏡手術という選択肢を提示することができます。
また飼い主様にとっても、かかりつけの動物病院で手術を受けられることは大きな安心につながります。
経験豊富な外科医による手術が受けられるのであれば、さらに安心感をもって愛犬を託すことができるでしょう。
術後のケアや経過観察も自院で対応できるため、犬のストレスも最小限に抑えられます。
このように出張外科サービスを活用することで、腹腔鏡手術の導入ハードルを大きく下げることができます。
まとめ
腹腔鏡下潜在精巣摘出術は、犬への負担が少なく確実な精巣の摘出ができる手術方法です。
導入には設備や技術の面で課題がありますが、出張外科サービスを利用することで多くの病院で実施可能になります。
今後は腹腔鏡下潜在精巣摘出術がより普及し、多くの犬が安全に治療を受けられるようになると期待されます。
RASKでは全国の提携動物病院に外科出張サービスを提供しています。
潜在精巣摘出術をふくむ腹腔鏡手術を導入したいとお考えの動物病院様はぜひご相談ください。