猫の肝生検は腹腔鏡が有用?|腹腔鏡下肝生検のメリットを解説
猫の肝数値の上昇を見つけた時に診断に苦慮したことがある獣医師の方は多いのではないでしょうか。
猫の肝臓疾患の診断において、肝生検は非常に重要な検査です。
しかし、従来の開腹手術による肝生検は猫にとって大きな負担となることも少なくありません。
近年では腹腔鏡を用いた低侵襲な肝生検が普及しつつあります。
今回は腹腔鏡下肝生検について深掘りしていきます。
獣医師の皆様はぜひ最後までお読みいただき、腹腔鏡下肝生検に取り組む際の参考にしてください。
猫の肝生検において腹腔鏡が有用な理由とは
猫の肝臓疾患の診断では最終的に肝生検が必要になることがあります。
猫の肝生検は開腹手術で行うことが多く、大きな切開が必要になるため、術後の疼痛や回復期間の長さが課題でした。
一方、腹腔鏡下肝生検は数ミリの小さな穴からカメラや鉗子などを挿入して行うため、開腹手術に比べて体への負担が軽減されます。
腹腔鏡下肝生検の具体的なメリットには
- 術後の疼痛の軽減
- 入院期間の短縮
- 術後の合併症リスクの低減
- 感染症リスクの低減
などがあります。
特に高齢の猫や基礎疾患のある猫にとって、腹腔鏡下肝生検はより安全な選択肢と言えるでしょう。
腹腔鏡下肝生検では肝臓全体を詳細に観察できる点も大きなメリットです。
開腹手術では視認できない部分もありますが、腹腔鏡では死角なく観察が可能で、より的確な生検部位の選定ができます。
また、腹腔鏡下手術ではカメラにより微細な出血まで確認できるため、より安全な手術が可能です。
猫の腹腔鏡下肝生検の適応
猫に対する腹腔鏡下肝生検はさまざまな肝疾患の診断に役立ちます。
ここでは猫における腹腔鏡下肝生検のおもな適応について詳しく見ていきましょう。
原因不明の肝酵素上昇
血液検査でALTやASTなどの肝酵素の上昇が認められるものの、原因の特定ができない場合は肝生検が有効です。
肝生検によって肝臓の組織学的変化を評価することで、診断の手がかりを得ることができます。
肝生検は特に慢性肝炎などの原因追求に有効です。
肝臓サイズの異常
触診や画像検査で肝臓の腫大や萎縮が認められる場合も肝生検によって原因疾患の診断につなげることができます。
腹腔鏡下肝生検ではカメラを用いることで肝臓のサイズや色調などを詳しく観察します。
超音波検査などではわかりにくい肝臓の形態の異常も腹腔鏡下では詳細に確認することが可能です。
腫瘤性病変
肝臓に腫瘤性病変を見つけた時も肝生検が有用な場合もあります。
画像検査で肝臓に腫瘤性病変を発見したら、まずは細胞診を実施することが多いです。
しかし、細胞診で診断がつかない場合は腹腔鏡下肝生検を行うことで腫瘍の種類などが判断できます。
動物病院での腹腔鏡下肝生検の課題
腹腔鏡下肝生検は猫の肝疾患診断において有用なツールですが、腹腔鏡手術には特殊な設備と技術が必要です。
腹腔鏡導入に伴う初期投資は多大であり、多くの動物病院が予算面での課題に直面します。そのため、必要な機器の購入や維持管理には戦略的な資金計画が不可欠です。
また、腹腔鏡手術の技術の習得には時間がかかり、獣医師および動物病院スタッフの継続的なトレーニングが求められます。
腹腔鏡下肝生検を実施する上での出張外科サービスのメリット
腹腔鏡下肝生検を動物病院で導入する際は出張外科サービスを利用することもおすすめです。
出張外科サービスでは経験豊富な獣医師によるサポートを受けられることも大きなメリットです。
腹腔鏡手術は高度な技術を要するため、十分な経験とスキルを持った獣医師による手術は成功率を高め、合併症のリスクを低減します。
出張外科サービスを利用することで飼い主様の安心感を確保でき、動物病院としての信頼性も向上します。
まとめ
腹腔鏡下肝生検は猫の肝疾患診断において安全で精度の高い方法です。
腹腔鏡手術は開腹手術に比べて術後の回復が早く、合併症リスクも低いため、積極的に検討すべき手法と言えます。
RASKでは腹腔鏡手術を全国で実施しております。
自身の動物病院で腹腔鏡手術を取り入れていきたい獣医師の方は気軽にお声がけください。