犬の骨折手術で知っておくべき合併症|骨折手術の成功率をあげるポイント
犬の骨折の手術は動物病院において頻繁に行われる治療の一つですが、合併症のリスクも多い手術です。
骨折の手術を行う際は合併症を理解し、適切に対処することが大切です。
今回の記事では骨折手術における合併症を未然に防ぎ、成功に導くためのポイントを解説します。
犬の骨折手術に取り組む獣医師の皆様はぜひ最後までお読みいただき、骨折手術の理解を深めましょう。
犬の骨折手術で起こりうる合併症
犬の骨折の手術において合併症は術後の経過に大きな影響を与える可能性があります。
骨折の手術で気をつけるべき合併症には以下のようなものが挙げられます。
感染
手術部位の感染は骨折手術後のもっとも一般的な合併症です。
手術部位の感染が起こると、骨の治癒が遅れたり、プレートやピンの除去が必要になる場合もあります。
感染を防ぐには手術中の無菌操作の徹底や適切な抗生剤の選択と投与が重要です。
骨癒合不全
骨の癒合不全とは骨折部位が正常に治癒せずに、骨の癒合が不完全な状態です。
骨癒合不全の原因は手術中の技術的な問題や固定方法の選択ミスが影響します。
小型犬は骨への血液供給が大型犬に比べて少なく、骨折治癒時の血液供給が不足することが癒合不全を引き起こす要因とされています。
特に高齢犬や持病がある犬では癒合不全に要注意です。
インプラントの破綻や緩み
プレートやスクリューなどのインプラントの破綻や緩みも骨折治療において非常に深刻な合併症です。
これらのインプラントのトラブルは手術後にインプラントに過剰に負荷がかかることで発生します。
インプラントのトラブルを防ぐためには術後の運動制限が大切です。
神経や血管の損傷
骨折の手術では手術中の操作によって、周囲の神経や血管を損傷する可能性があります。
特に複雑な骨折の場合は解剖学的構造を正確に把握することが重要です。
神経を損傷してしまうと、術後に麻痺がでることもあるので注意しましょう。
関節の拘縮や筋肉の萎縮
骨折の手術後に長期間固定を行ってしまうと関節の可動域が制限されたり、筋肉が萎縮することがあります。
関節の拘縮や筋肉の萎縮は最終的には運動機能に影響を及ぼすことがあります。
犬の骨折手術後は術後の経過観察とともに、適切なリハビリテーションを行うことが重要です。
犬の骨折手術の合併症を防ぐための予防策
犬の骨折手術後の合併症を防ぐために、いくつか注意すべきポイントがあります。
以下のような対策を講じることで、手術後の回復をスムーズにし、合併症のリスクを低減することができます。
術前の詳細な評価と計画
骨折の手術に臨む際はレントゲン検査で骨折部位の状態を詳細に評価することが大切です。
詳細な評価を行うことで、骨折のタイプに応じて最適な固定方法を選ぶことができます。
また、高齢犬や基礎疾患を持つ犬では血液検査などを実施し、麻酔リスクの評価をすることも重要です。
無菌操作の徹底
骨折の手術ではインプラントを使用することが多く、軟部外科より感染のリスクが高いです。
感染を防ぐためには手術室を清潔に保ち、術前の消毒を徹底するなどの対策が必要です。
また、必要に応じて術後に抗生物質を投与することもあります。
適切な固定
骨が正しく癒合しやすくするためには適切なインプラントによる固定が重要です。
不適切な固定は骨の成長や癒合に悪影響を及ぼし、再手術が必要になることもあります。
犬の体重や骨のサイズに合わせて、最適な固定方法を選択しましょう。
術後管理とリハビリテーションの実施
犬の骨折手術後の回復には術後管理とリハビリテーションも不可欠です。
手術後は犬をケージ内で安静に過ごさせ、激しい運動は避けましょう。
リハビリテーションは痛みが軽減した後に歩行訓練から開始します。
動物病院での水中トレッドミルやバランスボールなどを用いた専門的なリハビリテーションも有効です。
犬の骨折手術の成功率を上げるために
骨折手術の成功は犬の生活の質に直結します。
ここでは骨折手術の合併症を抑え、機能回復を最大化する方法をお伝えします。
セミナーに参加して最新技術を習得する
手術技術の向上を図るためには定期的なセミナーやワークショップへの参加が非常に効果的です。
セミナーに参加することで最新の手術技術や研究成果に関する情報が得られます。
セミナーは他の獣医師と情報交換や意見交換を行う貴重な場でもあり、異なる視点やアプローチに触れることで、新たな気づきが生まれることもあります。
手術チームを構築する
骨折手術の成功には、術者だけでなくチーム全体のスキルとコミュニケーションが重要です。
獣医師だけでなく、動物看護師を含む院内のスタッフと連携して治療にあたることで、より質の高い治療を提供することができます。
手術前の準備から術後のケアに至るまで、すべての過程で連携することで手術の成功率を高められます。
外部委託をする
複雑な症例や専門的な技術を要する骨折手術の場合は外部の経験豊富な獣医師に委託することも一つの選択肢です。
外部委託をすることは手術の成功率を向上させると同時に、動物病院スタッフの負担も軽減できます。
また、術後管理やリハビリテーションのアドバイスを受けることもでき、飼い主様の満足度上昇につながります。
まとめ
犬の骨折の手術をする際は合併症のリスクを常に頭に入れておくことが大切です。
合併症を防ぐには手術中だけでなく、術前から術後まで全てのステップで注意が必要ですね。
RASKでは全国の動物病院様向けに整形外科の出張外科サービスを提供しています。
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