犬の前十字靭帯断裂におけるTPLO手術|TPLO導入のポイントを解説
犬の整形外科手術の中でも、TPLOは前十字靭帯断裂に対する代表的な治療法の一つです。
しかし、TPLOは高度な技術と適切な術前・術後管理が必要であり、設備が整っていない施設や経験の少ない獣医師にとっては実施が難しい場合もあります。
今回の記事では整形外科の経験豊富な獣医師が犬のTPLOの基本を解説し、皆様の動物病院でTPLOを導入するポイントをお伝えします。
ぜひ最後までお読みいただき、TPLOを導入する際の参考にしてみてください。
犬の前十字靱帯断裂の病態と症状
犬の前十字靭帯断裂は、特に中〜大型犬や肥満犬で多くみられる整形外科疾患です。
前十字靱帯断裂は急停止や方向転換などを行った際に発症しやすいです。
また、加齢やクッシング症候群などの内分泌疾患が原因で、前十字靭帯が脆弱化していると軽い負荷でも断裂を起こすことがあるので注意しましょう。
前十字靭帯では
- 足を引きずる
- 膝を触ると痛がる
- 運動を嫌がる
- 座り方がおかしくなる(足を投げ出して座る)
などの症状が見られます。
前十字靭帯断裂を放置すると、変形性関節炎を引き起こすため、早期の治療が必要です。
TPLOとは?
TPLOは脛骨高平部水平化骨切り術とも呼ばれ、前十字靭帯断裂による膝関節の不安定性を改善させるための外科手術です。
TPLOは脛骨の上部を骨切りし、回転させて新しい位置にプレートで固定することで膝の安定性を回復させます。
犬の前十字靭帯断裂の手術は断裂した靭帯を人工物で補強する関節外法などが一般的でしたが、近年ではTPLOが第一選択となるケースが増えてきています。
TPLOは特に大型犬や活動量が多い犬種に有効です。
これらの犬種は関節外法などでは膝にかかる負荷に耐えきれずに、膝の安定化を得られないケースもあります。
TPLOはより強固に膝関節の安定性を得ることができ、従来の方法よりも成功率が高いとされています。
TPLOのメリット
TPLOが実施されることが増えている背景には以下のようなメリットがあることが考えられます。
- 機能回復が早い
- 膝関節の安定性の向上が得られやすい
- 術後のリハビリテーションが容易
ここでは、それぞれのメリットを詳しくみていきましょう。
機能回復が早い
従来の関節外法では手術後に安静が必要な場合が多く、完全な運動機能の回復には数ヶ月かかることが多いです。
一方、TPLOは手術後の機能回復が非常に早いとされています。
多くの症例で、手術後は比較的早期に歩行が可能になり、活動的な生活に戻ることができます。
膝関節の安定性が得られやすい
関節外法では人工靭帯(ナイロンなど)で関節を補強しますが、材料の劣化や緩みが生じるリスクがあります。
一方、TPLOは脛骨の骨切りをし、プレートで固定することで力学的負荷を根本から改善するため、より自然な膝関節の安定性が得られます。
TPLOは再発リスクが低く、特に大型犬においては、関節外法よりも安定した結果が得られることが多いです。
術後のリハビリテーションが容易
関節外法は術後の管理が難しく、早期にリハビリテーションを行うと、靭帯の代わりに使用した糸が切れてしまうことがあります。
特に大型犬では、糸が緩んだり切れたりすることが多く、再手術が必要になる場合があります。
TPLOは手術後に膝関節の安定性が得られているため、リハビリテーションが比較的簡単で、犬が早く日常生活に戻ることが可能です。
動物病院におけるTPLO導入の壁
TPLOは犬の前十字靭帯断裂に対して優れた治療効果を発揮しますが、実際に導入を検討する動物病院ではいくつかの障壁に直面します。
ここではTPLOを導入・実施する上で考えられる課題を解説します。
専門的な技術と経験が必要
TPLOは非常に専門的な技術を要する手術であり、経験豊富な獣医師が必要です。
手術には特別な器具や器材も必要であり、これらを使いこなすためには、相応の訓練と経験が求められます。
そのため、一般的な動物病院ではTPLOを行うことが難しい場合があります。
設備投資の負担
TPLOを行うためには高度な医療機器や手術用器具が必要です。
これらの設備投資は高額であり、特に小規模な動物病院にとっては大きな経済的負担となることがあります。
設備を整えるための資金調達や、維持管理のコストも考慮しなければなりません。
適切な術後管理が必要
TPLOは術後の回復が早いとされますが、適切な術後管理が必要です。
術後のケアが不十分であると、感染や痛みの持続などの合併症のリスクが高まります。
動物病院は術後のフォローアップ体制を整えるために、人材を確保する必要があります。
TPLOを外部委託するメリット
ここまで、解説したようにTPLOは有効性の高い手術ですが、導入のハードルが高いです。
これらの課題を解決する有効な手段として、TPLOの手術を外部委託するという選択肢があります。
外部委託をすることで、整形外科の豊富な知識と経験を持つTPLOを自身の動物病院で提供することが可能です。
高額な設備投資も必要がないため、TPLO導入の初期費用を抑えることもできます。
また、飼い主様にとっても、信頼できる動物病院で手術とアフターケアを一貫して受けることができるため、満足度の向上につながります。
TPLOの手術を外部委託することは動物病院と飼い主様双方に多くのメリットがあります。
まとめ
TPLOは犬の前十字靭帯断裂の治療において、非常に有効な選択肢です。
外部委託という選択肢を活用することで、より多くの獣医師がTPLOの手術を提供できるようになり、多くの犬とその飼い主様に満足してもらうことができます。
RASKでは全国の動物病院で整形外科の手術からアフターフォローまでを実施しています。
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