猫の中手骨骨折とは?|中手骨骨折の正しい治療法を獣医師が解説
「猫の様子がいつもと違って歩き方がおかしい」
猫の飼い主様でこのような異変を感じたことがある方は多いのではないでしょうか。
猫は高い所から飛び降りたり、事故によって骨折をしてしまうことがあります。
今回は猫の前足の骨折である中手骨骨折について解説します。
猫の飼い主様はぜひ最後までお読みいただき、中手骨骨折の理解を深めていただけると幸いです。
猫の中手骨骨折とは
中手骨は猫の前足にある細長い骨で、人間でいう手の甲の骨にあたり、ジャンプ時の衝撃吸収や獲物を捕らえる際の繊細な動きに重要です。
猫の中手骨は非常に細いため、高所からの落下などの衝撃で折れてしまうことが多いです。
中手骨骨折では複数の中手骨が同時に折れることも珍しくありません。
特に第3および第4中手骨が体重を支える主要な骨であり、これらが骨折すると症状が強く出ます。
中手骨骨折の原因

猫の中手骨骨折はおもに外的な衝撃によって発生します。
具体的には以下のようなケースで骨折することが多いです。
- 高い場所からの落下
- 交通事故
- ドアに挟まれる
- 他の猫との喧嘩
特に屋外に出る猫は交通事故などに巻き込まれることが多いため、注意しましょう。
猫を飼育する際は完全室内飼いを徹底することで、骨折のリスクを減らすことができます。
猫の中手骨骨折の症状と早期発見のポイント
猫の中手骨骨折を早期に発見するためには、症状を理解することが重要です。
中手骨骨折を起こした猫には、次のような症状が見られます。
- 前足をかばって歩く
- 前足を地面につけられない
- 前足が腫れている
- 痛みにより触られるのを嫌がる
- 指の形が不自然に曲がっている
中手骨は細い骨で、折れ方によっては外から変形がはっきり見えることもあります。
一方で軽度の骨折では、飼い主様が
「ただ足を痛めただけかな」
と思ってしまい、発見が遅れることも少なくありません。
猫の歩き方に異常が見られたら、早めに動物病院を受診することが大切です。
中手骨骨折の治療法
猫の中手骨骨折の治療の選択肢は外科手術と保存療法の2つです。
ここではそれぞれの治療法について詳しく見ていきましょう。
外科手術
骨のずれが大きい場合や複数の中手骨が骨折している場合は外科手術が必要です。
外科手術では骨の中に細長いピンを挿入して固定するピンニング法が行われることが多いですね。
特に体重がかかる第3、4中手骨が骨折している場合は外科的治療が必要になります。
外科手術では安定した固定が得られ、早期の機能回復が期待できる利点があります。
保存療法
骨折のズレが少なく、骨の安定性がある場合にはギプスや副木(そえぎ)で固定して自然治癒を待つこともあります。
子猫は骨の治癒が早いため、保存療法で回復できることも多いです。
ただし、猫はギプスを嫌がって外してしまうこともあり、飼い主様の管理が重要になります。
中手骨骨折の予後とリハビリ
猫の中手骨骨折は適切に治療すれば良好な回復が期待できます。
ただし、治癒のスピードや予後は以下の要因で変わります。
- 骨折の重症度
- 折れた本数
- 猫の年齢
中手骨骨折の治療を成功させるには骨がくっつくまでは安静にすることも重要です。
骨がくっつくまでには6〜8週間ほどかかるため、その間は運動は避け、骨折部位に負担をかけないようにしましょう。
骨がくっついた後は獣医師と相談しながら、徐々に運動を開始し、リハビリを行うことが大切です。
猫の中手骨骨折を予防するためにできること

猫の中手骨骨折は不意の事故や落下など思いがけないタイミングで発生することが多いです。
骨折を防ぐには以下のような対策をしましょう。
- ベランダや窓に脱走防止ネットを設置する
- 家の中で落下事故が起きないように徹底する
- 外に出さず、完全室内飼育にする
- 多頭飼育ではケンカが起きないように配慮する
普段から猫の様子をよく観察し、危険因子をできる限り減らす工夫が中手骨骨折予防につながります。
まとめ
猫の中手骨骨折は落下や交通事故などの思わぬアクシデントで起こる骨折です。
前足をかばって歩いたり、腫れや痛みがあるときは早めに動物病院を受診しましょう。
中手骨骨折は早期発見・早期治療が良好な予後につながりますね。
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猫の中手骨骨折の治療でお悩みの飼い主様は、ぜひご相談ください。
