猫の整形外科手術成功のカギ|猫の整形外科手術の知っておくべきポイントを解説

キャットタワーの上で座る猫

猫の整形外科手術成功のカギ|猫の整形外科手術の知っておくべきポイントを解説

近年、飼育頭数の増加に伴い、獣医療においても猫の診療の重要性が高まっています。
特に、飼育環境の変化などもあり、猫の整形外科疾患の需要が増加しています。
しかし、猫の整形外科疾患は診断が難しく、犬と異なる点も多いため、治療には適切な知識と技術が必要です。

今回は猫の整形外科疾患について解説し、手術を行う際のポイントをお伝えします。
猫の診療の幅を広げたい獣医師の方は、ぜひ最後までお読みいただき、参考にしてみてください。

目次

猫に多い整形外科疾患

猫の整形外科疾患は犬と比較して発生頻度や症状の現れ方が異なる場合があり、注意深い観察が必要です。
ここでは、猫に多く見られ、手術が必要となる可能性のある代表的な整形外科疾患について解説します。

骨折

猫は高いところからの落下や交通事故によって骨折することが多いです。
特に大腿骨や骨盤の骨折が多く、これらの骨折は手術による固定が必要になることがほとんどです。
猫は骨が細く脆いため、複雑骨折や粉砕骨折を起こしやすく、適切な治療を行わないと骨癒合不全や変形癒合のリスクが高まります。

膝蓋骨脱臼

膝蓋骨脱臼は小型犬でよくみられる疾患ですが、猫でも発生します。
猫の膝蓋骨脱臼はベンガルやアビシニアンなどの純血種で多いとされていますね。
膝蓋骨脱臼は高所からの落下などの外傷が原因のこともありますが、先天性のことが多いです。
症状が軽度の場合は保存療法で経過観察を行うこともありますが、重度の場合は手術によって膝蓋骨を正しい位置に戻し、安定させる必要があります。

股関節形成不全

猫の股関節形成不全も純血種に多く、

  • メインクーン
  • ヒマラヤン
  • シャム
  • アビシニアン
  • ペルシャ

などで好発するとされています。
活動性の低下やジャンプや段差の昇降をしなくなるなどの症状がみられますが、飼い主様が気がつかないことも多いです。
猫の股関節形成不全は保存療法で症状の改善がみられることが多いですが、重症度によっては手術が必要になることもあります。

猫の整形外科疾患の治療は難しい?

猫の整形外科疾患の治療は犬と比べて、特有の難しさがあります。
その理由としては以下のような要因が考えられます。

正確な診断が困難

猫は診察中にストレスを感じやすく、緊張や恐怖から本来の様子を見せてくれないことがほとんどです。
レントゲン撮影時も動かずにじっとしていることが難しく、鎮静が必要になることもあります。
猫の整形外科疾患の正確な診断を下すためには、飼い主様からの詳細な情報収集や経験豊富な獣医師による対応が求められます。

骨が細く、固定が困難

猫の骨は犬に比べて細いため、手術操作やインプラントの選択には繊細な技術が求められます。
例えば、プレートの設置やスクリューの挿入においては骨の厚さや強度を考慮した適切なサイズを選択する必要があります。
適切な固定ができないと、骨の癒合不全のリスクが高まるため注意が必要です。

術後管理が困難

猫は手術後の管理も難しい動物です。
猫は狭い場所に隠れたり、高い場所にジャンプしたりする習性があるため、安静に過ごすことが難しいことがあります。
術後の合併症を防ぐためには猫がストレスを感じずに過ごせる環境を整えることが大切です。

猫の整形外科疾患の治療を成功させるには?

猫を抱いている女性獣医師

猫の整形外科疾患の治療を成功させるには獣医師の技術力はもちろんのこと、いくつかのポイントがあります。
ここでは、猫の整形外科疾患の治療に重要なポイントを解説していきます。

適切な診断と治療計画

猫の整形外科疾患の治療を成功させるための最初のステップは正確な診断を下すことです。
猫は痛みを隠す傾向があるため、詳細な身体検査と画像診断を駆使して、正確に疾患を特定することが求められます。その上で、猫の年齢や健康状態、飼い主様の意向などを考慮し、最適な治療方法を選択する必要があります。

猫にやさしい周術期管理

猫はストレスに弱いため、手術の前後にはストレスを最小限に抑えるための配慮が必要になります。
例えば、静かで清潔な入院環境を準備したり、猫が安心できるように飼い主様の匂いのついたタオルなどをケージに入れることなどが有効です。

猫は痛みにも敏感なため、術後の疼痛管理も重要です。
適切な鎮痛剤を使用することで、猫の痛みを和らげ、回復を促進することができます。

手術体制の構築

整形外科手術を成功させるためには高度な専門知識と技術を持つ獣医師やスタッフの存在が欠かせません。
特に複雑な疾患の場合は獣医師1人の力だけでは治療を成功させることは難しいです。
整形外科疾患の治療では動物病院スタッフが一丸となり、コミュニケーションを取りながら、治療を進めていくことが大切です。

専門性の高い治療は外部委託という選択肢も

スーツケースを片手に出張に向かう男性

近年、獣医療の高度化・専門化が進む中で、すべての動物病院で高度な技術と設備を必要とする猫の整形外科手術に対応することは難しいのが現状です。
もし、皆様の動物病院で猫の整形外科疾患の治療が難しいと感じた場合は専門的な知識と技術を持った外部の獣医師に委託することも一つの選択肢です。

外部委託には、

  • 専門性の高い治療を飼い主様に提供可能
  • 高額な設備投資が不要
  • 動物病院スタッフの負担軽減

などのメリットがあります。
信頼できる外部委託先と連携することで、より多くの猫に対して、質の高い整形外科医療を提供することが可能になりますね。

まとめ

猫の整形外科疾患の治療は飼い主様の意識の高まりとともに、今後ますます需要が高まると予想されます。
自身の動物病院で治療の幅を広げたい場合は外部委託サービスの活用などが有効です。

RASKでは長年培ってきた経験と知識を生かし、質の高い獣医療を出張サービスとして提供しています。
整形外科の診療に取り組みたいと考えている方は、気軽にご相談ください。

  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

獣医師、合同会社RASK代表、京都動物医療センター整形外科科⻑
資格:テネシー大学公式認定 CCRP
全国の犬猫の出張外科医として活動中