犬のレッグペルテス|手術の必要性について獣医師が解説

横を見ているヨークシャーテリア

犬のレッグペルテス|手術の必要性について獣医師が解説

犬のレッグペルテスという病気をご存知でしょうか。
犬のレッグペルテスは、若い小型犬で股関節に痛みが生じる病気です。
「うちの犬はまだ幼犬なのに、時々足を痛そうに挙げている」
「うちの子は獣医師にレッグペルテスと診断された」
という飼い主様もいらっしゃるのではないでしょうか。

今回は、犬のレッグペルテスという病気とその治療法について詳しく解説します。
ぜひ最後までお読みいただき、愛犬がレッグペルテスと診断された際にお役立てください。

うつ伏せになっているトイプードル
目次

犬のレッグペルテスについて

犬のレッグペルテスは、大腿骨の股関節にはまる部分が壊死して痛みを生じる病気です。
正式名称をレッグ・カルベ・ペルテス病と言い、トイ・プードルやヨークシャー・テリアなどの小型犬に多いことが特徴です。
発症年齢は3〜13か月齢とかなり若いうちに発症します。
症状は軽度だと時々足を浮かせるぐらいですが、酷い場合は全く後ろ足がつけなくなることがあります。
原因は遺伝性疾患と言われていますが、未だはっきりと分かっていません。
犬のレッグペルテスでは、股関節にはまる大腿骨頭への血液供給が何らかの理由で遮断されて大腿骨頭の一部が壊死します。
大腿骨頭の一部が壊死すると、歩行中にかかる圧力で壊死した部分がつぶれたり骨折したりして非常に強い痛みが生じます。

犬のレッグペルテスの手術について

犬のレッグペルテスは、原則として外科手術で治療します。
大腿骨頭が壊死してつぶれた際の痛みは非常に強く、内服薬で痛みを管理して日常生活を送るのは難しいためです。
また、長期間様子を見ていると慢性的な炎症によって変形性関節症へと発展することもあり、早期に外科手術をすることが望ましいです。
犬のレッグペルテスに対しては、一般的に大腿骨頭骨頸切除術という手術が行われます。

以下に大腿骨頭骨頸切除術について詳しく解説していきます。

大腿骨頭骨頸切除術

大腿骨頭骨頸切除術は、壊死した大腿骨頭を切除して股関節の痛みを取り除く手術です。
術式としては、まず犬を横に寝かせた状態で股関節の真上の皮膚を切皮します。
腰の筋肉をよけながら股関節にたどり着いたら、股関節を覆う組織を切って大腿骨頭が見えるようにします。
大腿骨頭を専用の道具で切断し、角が残らないように丸めてから傷を縫って終了です。

「大腿骨頭を切除してしまって大丈夫なの?」
と思われるかもしれませんが、大腿骨頭がなくなった後は、周囲の組織や筋肉が収縮することで大腿骨が元の位置に収まります。
大腿骨が元の位置に戻るため、術後はほとんど問題なく歩けるようになります。
それでも、大腿骨頭を切断することに戸惑いを感じる方もいるかもしれません。

大腿骨頭骨頸切除術のメリットとデメリットを解説していきますので、手術を受けるか迷っていらっしゃる方は参考にしてみてください。

大腿骨頭切除の模式図

大腿骨頭骨頸切除術のメリット

大腿骨頭骨頸切除術のメリットは以下の3つが挙げられます。

  • 痛みがなくなる
  • 手術成績が安定している
  • 特殊な設備が必要ない

ひとつずつ解説していきます。

痛みがなくなる

痛みがなくなることは当然のようですが、大きなメリットです。
犬のレッグペルテスでは、非常に強い痛みに苦しむ場合が多いです。
痛み止めでは制御できない痛みも手術によって劇的に改善します。

手術成績が安定している

手術成績が安定していることはこの術式の特徴です。
術後の飼い主様の満足度が約90%だったという報告もあります。

特殊な設備が必要ない

特殊な設備が必要ないため、多くの病院でこの手術を受けることができます。
犬のレッグペルテスに悩む飼い主様は、遠方の外科専門病院に行かなくてもこの手術で治療を受けることができます。

大腿骨頭骨頸切除術のデメリット

大腿骨頭骨頸切除術のデメリットは以下の3つが挙げられます。

  • 全身麻酔のリスク
  • 合併症のリスク
  • 後遺症のリスク

ひとつずつ解説していきます。

全身麻酔のリスク

大腿骨頭骨頸切除術は全身麻酔で行うため、麻酔のリスクがあります。
ただ、手術を受けるのは若い犬がほとんどであるため、麻酔のリスクは非常に小さいです。

合併症のリスク

合併症として、適切に大腿骨頭を切断できなかった場合に痛みが残るリスクがあります。
大腿骨頭の切断端が尖っていると、筋肉や骨盤の寛骨臼に当たって痛みが出ます。
リスクを最小限にするためには、熟練した獣医師に手術を依頼することが重要です。

後遺症のリスク

後遺症として、患肢の筋肉が細くなったり、時々足を挙げる仕草が残ることがあります。
大腿骨頭がなくなるため、完全な機能回復をするわけではないことが原因です。
特に、経過が長く慢性の関節炎に発展している場合は後遺症が残りやすいです。
愛犬がレッグペルテスになったら、早期に手術をすることが重要と言えます。

まとめ

犬のレッグペルテスは手術をしなければ改善しない病気です。
長い間様子をみて慢性経過になると、術後の改善に乏しくなります。
愛犬が後ろ足を挙げていたり、歩き方に違和感を感じたら早めに獣医師に相談しましょう。

RASKでは、全国の動物病院に外科の出張サービスを行っています。
全国の動物病院と連携して、股関節全置換術も含め、良い治療を動物たちが受けられる環境を提供しています。
犬のレッグペルテスの専門的な手術に興味がある方は、提携している動物病院までお問い合わせください。

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この記事を書いた人

獣医師、合同会社RASK代表、京都動物医療センター整形外科科⻑
資格:テネシー大学公式認定 CCRP
全国の犬猫の出張外科医として活動中