犬の整形外科疾患における跛行診断の重要性|跛行診断をしないとどうなる?
動物病院に来院される飼い主様から
「最近、犬の歩き方がおかしい」
「犬が足を引きずってどこか痛そう」
といった相談を受けることは少なくないでしょう。
犬の跛行はさまざまな原因で起こりますが、正確に診断を行うことで適切な治療計画を立てることが可能です。
しかし、犬の跛行診断に苦手意識をお持ちの獣医師の皆様は多いと思います。
今回は犬の整形外科疾患における跛行診断について詳しく解説します。
ぜひ最後までお読みいただき、今後の整形外科診療にお役立てください。
犬の整形外科診療における跛行診断の基本
跛行診断とは、歩様の異常や程度を評価し、問題のある部位を特定する診断方法です。
犬の整形外科疾患の初期診断において、跛行診断はもっとも基本的かつ重要な診断ツールとなります。
犬の跛行診断では以下のような項目を評価します。
- 歩行時の体重負荷の状態
- 歩様の異常
- 患肢の使用頻度
- 跛行のパターン(間欠的か持続性か)
跛行診断は、問題箇所をいち早く特定し、適切な治療計画を立てるための第一歩です。
跛行診断が整形外科疾患の診断において重要な理由
跛行診断は整形外科診療の基本です。
犬の整形外科疾患における跛行診断には以下のような役割があります。
病変の特定
犬の整形外科疾患の診断では、どの部位に問題が起きているかを認識することが大切です。
跛行診断で問題部位が特定できれば、次の検査や治療のプランを立てやすくなりますね。
さらに、実際に触診を行い、痛みや可動域の異常がないかを確認することも重要です。
治療計画の立案
跛行診断による正確な診断に基づいて、適切な治療計画を立てることができます。
例えば、犬の前十字靭帯断裂の場合は手術による治療が一般的ですが、跛行診断によって手術のタイミングや方法を適切に選択することができます。
再発予防
動物病院での整形外科の診察の多くは、診断をつけることなく痛み止めによって治療されています。
適切な診断ができないと、痛み止めで一時的に症状が緩和されても、再発することが多いです。
跛行診断で原因を特定することで、再発を防ぐための対策を講じることができます。
跛行診断が適切にできずに治療が遅れた場合のリスク
跛行診断が適切に行われず、治療が遅れることで、以下のようなリスクが生じる可能性があります。
これらのリスクは犬の健康だけでなく、飼い主様の負担や動物病院の信頼にも影響を及ぼすため、早期かつ正確な診断の重要性を再認識する必要があります。
疾患の進行による症状の悪化
跛行の原因となる疾患は放置すると進行性であることが多いです。
例えば、関節炎の場合は初期段階では軽度の痛みや跛行しか見られません。
しかし、進行するにつれて関節の変形や軟骨の損傷が進み、歩行が困難になることがあります。
疾患が進行すると、治療がより複雑になり、犬の生活の質が著しく低下してしまいます。
治療コストの増加
整形外科疾患は治療が遅れることで、より高度な対処が必要になる場合があるので注意しましょう。
さらに、治療が長引くことで通院回数や検査費用が増加し、飼い主様の経済的負担が大きくなります。
これにより、飼い主様が治療を断念せざるを得ない状況に陥ることもあり、結果的に犬の健康がさらに悪化する悪循環が生じます。
飼い主様の精神的負担の増大
ペットの健康状態が悪化すると、飼い主様は大きな精神的負担を感じます。
特に、跛行が改善されず、ペットが痛みや不快感を抱え続けている様子を見ることは飼い主様にとって非常に辛い経験です。
また、治療が長引くことで飼い主様は
「もっと早く気づいてあげればよかった」
という後悔を抱くことも少なくありません。
動物病院への信頼低下
跛行診断が適切に行われず、治療が遅れた場合は飼い主様の動物病院に対する信頼を失う可能性があります。
特に、初期段階で適切な診断が行われなかったために症状が悪化した場合は飼い主様は不満を抱きやすいです。
飼い主様が他の人にネガティブな体験を話すことで、病院の評判が低下し、新規の顧客獲得が難しくなることもあります。
これにより、動物病院の経営にも悪影響を及ぼす可能性があるので要注意です。
ペットの生活の質の低下
整形外科疾患の治療が遅れ、痛みや不快感が続くことで食欲が低下し、活動量が減ることがあります。
また、歩行が困難になることで散歩や遊びが制限され、ストレスがたまることもありますね。
さらに痛みが続くことで、ペットが攻撃的になったり、無気力になったりすることがあります。
二次的な健康問題の発生
跛行によって特定の足に負担がかかり続けることで、他の関節や筋肉に過度のストレスがかかり、新たな疾患を引き起こすことがあります。
また、運動量が減ることで肥満や筋力低下が進み、さらなる健康問題を引き起こします。
二次的な健康問題が発生すると、治療がさらに複雑になり、回復までの道のりが長引くことになるでしょう。
跛行診断を行う際の注意点
犬の跛行診断は、整形外科疾患の早期発見と適切な治療に不可欠です。
跛行診断を行うことで飼い主様に対してより具体的なアドバイスを提供することができ、治療に対する理解と協力を得やすくなります。
実際に跛行診断を行う際のポイントをいくつかご紹介します。
飼い主様への丁寧な説明
跛行の原因や治療法などについて飼い主様にわかりやすく説明することが重要です。
また、治療期間や費用についても事前にしっかりと説明し、納得を得た上で治療を進めるようにしましょう。
画像や動画を用いて、視覚的に理解を深めてもらうことも有効です。
他の疾患の可能性も考慮
犬の跛行は整形外科疾患以外でも、神経疾患など、さまざまな原因で起こる可能性があります。
整形外科的な問題だけに焦点を当てるのではなく、他の疾患の可能性も考慮して、全身状態をよく観察することが重要です。
専門医への紹介
跛行診断によって適切な治療が必要と判断した場合には、ためらわずに整形外科専門医へ紹介しましょう。
整形外科疾患は治療が遅れると、飼い主様の満足度低下にもつながります。
専門性の高い知識や技術、設備を備えた専門医による治療は動物の予後改善に大きく貢献します。
まとめ
正確な跛行診断を実施することで、動物病院は診療の質を向上させ、動物と飼い主様によりよい獣医陵を提供することが可能となります。
跛行診断は特別な機器を必要としない基本的な診断技術でありながら、その重要性は非常に高いです。
日々の診療において、この基本的な診断スキルを磨き、活用していくことで整形外科診療の質の向上につながります。
RASKでは整形外科の経験が豊富な獣医師による動物病院向けの跛行診断サービスを提供しています。
跛行診断に苦手意識のある獣医師の皆様はお気軽にご相談ください。